国際金融センターとの格差
「上海はすでに、金融市場システムが相対的に整備され、金融機関と人材が集中し、影響力を備えた国内金融センターに発展した。ほぼ国際金融センターとなる力は持っている」。方星海副主任はこう話す。
中国人民大学金融・証券研究所の呉暁求所長は、上海が国際金融センターとなる上で最も有利な要素として2点を挙げている。第1は、経済成長が急速で、経済規模も拡大し続けていることだ。05年末までに経済規模で世界4位となり、成長率は一貫して10%前後を維持している。この高成長はかなりの期間続く。第2は、貿易規模が絶えず増大し、非常に活発になっていることだ。また国際的な経済往来活動も増加している。
呉所長は「最も重要なのは、金融環境が比較的安定していることだ」と強調。上海は一貫して金融を最優先に発展させる戦略的地位に据えてきた。中国の金融機関の改革は終わりに近づいており、工商銀行や建設銀行、中国銀行の3大国有銀行は上場を果たし、金融機関は健全かつ持続的、安定して発展する軌道に入りつつある。しかも中国は資金流動性が相対的に過剰な時代を迎えているため、国際資本市場にサービスを提供する能力を備えている。
呉所長は「上記の理由から、中国が近い将来に国際金融センターになるのは間違いない」と強調する。
1800万を擁する上海は、大陸で人口の最も多い都市だ。金融機関のほか、ゼネラルモーターズやIBM、ALUといった世界の企業約150社が投資している。スタンレー氏は「上海はアジアの主要な金融センターとなる期待を持っているが、将来、この地位を越える可能性がある」と話す。
だが、国際金融センターとの格差はまだ大きい。
上海国際金融学院の陸紅軍院長は「現在の上海に欠けているのは主に、金融の刷新、金融リスクの防止と金融の人材などだ」と指摘。
その上で「国内金融市場と金融機関の透明度が十分でないため、市場のリスク能力を早急に高める必要がある。金融の刷新では、オプション株や先物レート、オプションレートなど新たな金融派生商品を適時投入しているが、現状から見ると、香港やシンガポールなどの市場との差は大きく、韓国やインドにも及ばない」と強調。
さらに陸院長は「今後の長い期間、金融の刷新とリスク管理が国際金融センターになる上で影響を及ぼす要因になるだろう」と分析している。
金融の人材では、ハイレベルな、また中核となる専門の人材が不足している。不足が深刻なのは、企業幹部や経営管理、商品開発、業界研究などの分野だ。専門家の試算では、国際金融センターになるにはまだ約100万人不足しているという。