ディスカッションの中で中国の企業家は、「言うのは簡単でも、実行するのは難しいとよく言われているが、どうやってCSR理念を会社及び社員に浸透するのか」と山下氏に質問した。山下氏の説明によると、オムロンはCSRを経営戦略の中に組み込み、事業活動の中で遂行していくことが最も重要であると考えており、2007年度には、それまで社長直轄であったCSR担当部門を、グループの経営戦略の策定を担う「グループ戦略室」の中に組み込み「CSR推進部」として再編したという。これによって、CSRをより深く経営戦略に組み込み、CSR経営の実効性と完遂性を高められる体制を構築した。また2008年4月には、経営陣自らがグループのCSR全般の現状と課題を把握し、将来の方向づけを行うための委員会組織として「グループCSR行動委員会」を設置、CSRの視点から経営全体を俯瞰し、経営戦略とCSRを一層高次元に統合していることも明らかになった。
また中国におけるCSR活動に関しては、1979年に技術交流を開始して以来、オムロンは中国社会との交流を深めてきており、2001年以降は、中国エリアを重点戦略地域と定め事業を拡大してきた。現在、中国エリアでは1万3千人を超える中国人社員が働いており、生産規模、売上規模も年々拡大し、経済・環境・社会に与えるインパクトは増大している。このような状況の中、オムロンは中国エリアにおいて、取り組む5つの重点課題を2005年2月に設定し、事業活動に組み込んだCSR活動を推進するとともに、中国社会との共生を目指した地域貢献活動にも積極的に取り組んでいる。
サロンは2時から5時まで続いた。CSRという言葉自体は、中国では2005年より一般に広がったが、その実内容及び具体的実行運用の方法などについては、中国の企業にとってまだ初期段階にある。今回のオムロンに関するケーススタディを通して、参加者はCSRについてはもちろん、またCSRと企業の持続的発展との関連に対する理解と認識も高めることができた。オブザーバーを務める陳釗教授は総括の中で、「社会に貢献・奉仕するというCSRの精神と理念を持つ企業こそ、社会的ニーズを掴むことができ持続的発展ができる」と企業に対するCSRの意義を強くアピールした。
同サロンは中国企業家と多国籍企業家とのコミュニケーションのプラットホームとして開催され、中国企業の国際化を促進すると同時に、中国における外資企業のプレゼンスの向上にも繋がる。14日のサロンは、正にこのような役割を果たしている、と、参加者達は口を揃えた。
「人民網日本語版」 2008年11月18日 |