貿易の極度の集中問題は、輸出市場が米国や欧州に偏っていることに端的に現れている。2007年の大陸部貨物貿易における輸出総額は1兆2180億ドルで、うち欧州連合(EU)への輸出額は2452億ドルで輸出額全体の20.1%を、米国へは2327億ドルで同19.1%を占めた。加えて香港への輸出額1844億ドル(同15.1%)のほとんどが中継貿易で最終的には欧米市場に輸出されており、大陸部から欧米市場への実際の輸出額が輸出額全体に占める割合は50%を超える。こうして中国の輸出産業や国民経済は欧米経済の動向に極度に依存したものとなり、さまざまな面で制約を受けている。輸入力もまた、輸入国が輸出国に影響を与える上での一つの手段であることを理解するべきだ。米国はどのようにして世界中の企業に自国の法律を遵守させるに到ったのだろうか。それは企業が米国市場を失いたくなかったからだ。対外貿易市場の極度の集中は、輸入にも同じようにみられる。中国では多くの重要資源をごく一部の国や多国籍企業から買い入れ、輸入元が極度に集中している。その結果はどうかというと、中国が高い代償を支払っていることは周知の事実だ。こうした状況を改善できなければ、世界の政治・軍事局面に大きな変化が生じた場合、より深刻な苦しみを味わうことにもなりかねない。
対外貿易の極度な集中のリスクについてはよく知られており、状況を変えるために多くの努力もなされているが、それではなぜ状況を根本的に転換させることができないのだろうか。原因として、国によって経済発展レベルに差があり、豊かな欧米諸国と発展途上の国とでは消費力に違いがあること、また国によって資源の埋蔵量が異なり、鉄鉱石はオーストラリアとブラジルに、石油はペルシャ湾に多く分布することなどが考えられる。だが根本的な原因は現行の国際通貨システムや国際市場メカニズムの中にこそあるといえる。現行の国際通貨システムの下で、欧米諸国は世界最大の国際通貨発行国でもあり、印刷機を動かしさえすれば輸入代金を無限に支払い続けることができるからだ。中国が発展途上国に輸出を拡大する時には、相手国の支払い能力という制約に直面しなければならない。
市場の多様化を推進するには、各市場向けに売れ筋商品を開発するだけでなく、貿易相手先が支払い能力の制約を取り払うための手助けをすることも必要だ。このために中国が取ることのできる措置には、資金の貸し付けや直接投資などがある。やや以前から最近に至るまで、中国は輸入の拡大と重点開拓輸出市場の支払い力強化とを結びつけ、当該国からの輸入の拡大を通じて同国の収入を増やし、対中輸入力が強化されるようはかってきた、こうしたプロセスをふまえながら、中国は秩序をもって段階的に人民元の国際化を推進することが可能だといえる。
「人民網日本語版」2008年12月15日
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