技術界に議論を巻き起こし、商売人をうずうずさせ、珠江デルタ地域の「山寨」(模倣)力の国際的イメージを向上させている製品がある。河南省出身の潘兄弟が開発した「アップルピール520」だ。携帯音楽プレーヤー「iPod touch」に装着すると、携帯電話に早変わりするという画期的な装置である。
この製品を中国国内や米国市場で普及させるためには、知的財産権の問題を解決しなければならない。しかしこの製品は、奇抜なアイデアや活力にあふれる中国の「山寨文化」は創造的活動の成長土壌であるかもしれないというひとつの希望をもたらした。
機械設備を所有していない潘兄弟が自分たちだけでこのような装置を生産することは不可能だ。深センの「山寨文化」のおかげで、小さな工場を見つけて低コストでサンプルを作ることができたのである。山寨工場は、ノートパソコンなどの最新の電子製品をわずか1週間で模倣して製造する。品質は少々劣るが、模造品と正規品は驚くほど似ていて、専門家でないとその真偽を見分けることはできない。ただし、山寨工場にはひとつの致命的な弱点がある。それは、模倣して製造することには長けているが、オリジナルの製品を生み出すことができないことである。
そこで、潘兄弟のような創意に満ちた人が自分たちのアイデアと山寨工場の製品組立技術を結びつけることができれば、たった2人でも全世界を揺るがすことができるのだ。
これは歴史的な技術進歩のひとつといえる。1970年代、スティーブ・ジョブスの協力の下、スティーブ・ウォズニアックは余暇にアップルコンピュータを開発した。当時は彼らも技術オタクの若者に過ぎなかった。
中国の学校はますます多くの「デジタル住民」――情報技術に囲まれて大きくなった人々――を輩出している。こうした中、「アップルピール」のような突飛な製品が生まれても不思議ではない。単なる偶然の一致かもしれないが、4月――「アップルピール」が登場する数カ月前――、広東省の政府高官は「山寨製品がすべて権利侵害というわけではない」と述べ、他人の知的財産権を侵害しない山寨製品については奨励すべきだとの考えを示した。
こうした発言は、「山寨文化は広東省の工業イメージ向上を図る推進力の一つになりうる」と広東省がはっきりと認識していることを示している。
オリジナリティ創出の促進を切に願うのならば、潘兄弟のような大衆発明家をいかに援助するかを考えるべきだろう。このような人々は経済的に苦しく、政府やビジネス界との人脈もなく、自分の発明をどのように守ればいいのかも知らない。彼らの活動を援助してこそ、「山寨文化」は繁栄・発展し、世界のステージに登るのである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年9月25日