ボーイングの複数の型式が最近、安全事故を起こしている。737MAX9は米国及び世界各地で飛行停止と検査を余儀なくされており、ボーイングの数多くの問題が明るみに出ている。また米国企業のガバナンスの失敗、監督管理部門の監督不行き届き、偏狭な産業政策による悪影響などの深いレベルの問題が浮き彫りになった。米国の製造業が神壇を下り、衰退に向かう象徴的な出来事となった。
事故が多発
今月5日、米アラスカ航空のボーイング737MAX9が離陸してからまもなく事故が発生した。機内側壁のドアプラグ(非常ドア)が脱落した。災いはさらに続いた。今月13日、全日空のボーイング737-800型機の操縦席の窓に大きな亀裂が入った。ブリンケン米国務長官が17日、スイスの世界経済フォーラム年次総会から米国に帰国する際、搭乗を予定していたボーイング737が離陸前に酸素漏れを起こし、搭乗機の変更を余儀なくされた。今月18日、米アトラスのボーイング製貨物機のエンジンがマイアミ国際空港から離陸後に故障し、同空港への緊急着陸を余儀なくされた。
2018年10月と2019年3月には、インドネシアのライオン・エアとエチオピア航空の墜落事故が発生し、346人が死亡した。事故機はいずれもボーイング737MAX8。737MAXはその後、世界の多くの国と地域で2年弱に渡り飛行停止となった。
安全よりもカネ
ボーイングの生産と製造の乱れは今に始まったことではない。
米ベテラン記者・作家のピーター・ロビソン氏は著書「Flying Blind」の中で、ボーイングは1997年に競合他社のマクドネル・ダグラスを買収した後、向上に向上を重ねるエンジニア文化から利益重視路線に転向したと指摘した。これによりボーイングの企業管理、研究開発、生産が簡略化された。エアバスの新機種と競争するため、ボーイングは十分なテストと検証を行わず慌てて737MAXを発売し、その後の飛行安全リスクを残した。
ボーイングの管理問題は、航空機生産・製造の欠陥を招いた。米政府の関連部門も監督責任を果たしていない。米連邦航空局は経費節約のため数十年に渡り、監督管理部門が果たすべき一部の航空機安全認証をボーイングなどの外部の航空機メーカーに委託してきた。これによりボーイングは長期的に「選手兼審判」になった。
米製造業の衰退を反映
一葉落ちて天下の秋を知る。「メイド・イン・アメリカ」のトップブランドだったボーイングの問題は、米国の製造業が苦境に陥り、衰退に向かっていることを反映した。ボーイングのトラブルは、実際には米国の製造業全体の衰退の縮図だ。
同社の財務報告によると、同社の2023年第3四半期現在の負債総額は1510億ドル、総資産は1343億元で、すでに負債が上回っている。
ボーイングは今や大量の部品の生産を外部に委託し、最終組立のみを担当するようになった。ボーイングは、これは企業の利益を最大限に保証するためと説明している。アナリストは、ボーイングは生産で外部に過度に依存し、品質管理を軽視し、製品の競争力が低下したと指摘。同じように米国の多くの製造メーカーが業務を外部委託し、その結果かつて競争力を持った米製造メーカーの強みが徐々に失われている。
米国は製造業の巻き返しを掲げたが、過去数年の国内での生産能力再構築には進展がなく、産業チェーンの国内回帰にも顕著な成果が見られない。次世代の技術者の育成は決して一朝一夕でできることではない。また米国は政治的な理由によりサプライチェーンに影響を及ぼし、いわゆる「脱リスク」の大きなリスクを無視している。他人ではなく逆に自身に害をもたらし、自国企業の経営と生産に重傷を負わせている。
ボーイングの挫折は企業ガバナンスの失敗の必然的な結果、また米国の偏狭な産業政策のせいであり、さらには米国の製造業が神壇を下りる典型的な出来事との観点もある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年1月24日