中国江西省婺源市では、満開の菜の花畑が白壁に黒瓦の徽派建築(安徽省の伝統的な建築様式)の建物に映え、花見客らを魅了していた。河南省洛陽市では、ボタンの新品種「三月蘭」が見頃を迎え、観光客らの目を楽しませていた。
祖先を供養する伝統的な祭日「清明節」の連休(今年は4~6日)は、親戚訪問や旅行、踏春(春の行楽)など、さまざまな外出が増える。文化・観光部データセンターの試算によると、連休3日間の国内旅行者数は延べ1億1900万人と、比較可能な2019年同期比で11.5%増加、旅行消費額は539億5千万元と12.7%増加した。
桃や梨の花に菜の花、ボタンなどを楽しみながら春の野山を散策することは、文化観光市場の新たな成長の芽として注目を集めている。
3月に入ってから、「花見」や「踏春」の入場券の予約件数は前年の7倍近く増え、花見関連商品の予約件数も前年の3倍以上に増加している。
中国のフードデリバリー大手、美団傘下のシンクタンク美団研究院の歴基巍副院長は「この春は花見や行楽などの文化観光消費が盛り上がりを見せている。その潜在力の大きさだけでなく、高度化していることも見てとれる」と説明した。
今年に入ってから文化観光消費は順調に伸び、規模も拡大しているほか、消費構造もパーソナライズ化、多様化、高度化が続いている。自然を身近に感じ、心も体もリラックスしたいという人々のニーズが年々高まっていることから、花見や行楽は旅行やレジャーとして人気となっている。
今年の「政府活動報告」では、「スマートハウスや娯楽・観光、スポーツイベント、国産ブランド品などの新たな消費の成長分野を積極的に育成する」方針が示された。これを受け、各地では花見需要の新たな動向に合わせ、地場産業の特色に結び付けて、独創的で多様な活動を企画し、観光客にさまざまな体験を提供するなど、人々の消費意欲を一段と掻き立てている。
花見や行楽には文化的な趣がある。河南省洛陽市では、漢服に身を包んで花畑を散策することが、若者たちの間で流行している。江蘇省南京市にある莫愁湖公園では先月下旬、海棠の花と国風(中国の伝統文化を取り入れた様式)を楽しむ催し「海棠花会」が開かれた。参加者は彫刻版画や絵団扇(えうちわ)、葉拓などの伝統工芸を体験し、花見と伝統文化の魅力を同時に楽しんだ。
花見や行楽は一層、没入感が増す。江西省上饒市婺源県にある厳田村では、花見専用のトロッコ列車が運行しており、観光客は菜の花畑で写真撮影を体験できるなど、心ゆくまで楽しめるようになっている。
雲南省大理市では、民宿の庭に花が咲き乱れ、その様子を宿泊客が屋内から眺めて美しい春を堪能できるようになっている。各地ではこのように花見やキャンプ、市場、スポーツを一体化させるなどして、消費を強く喚起しており、多くの人気観光地では、独創性にあふれた花関連の文化クリエイティブグッズを一定規模の周辺産業に発展させている。
雲南省紅河ハニ族イ族自治州開遠市では、花卉産業が農家の収入を増やし、暮らしを豊かにしている。同市のデジタル花卉産業チェーンプラットフォームが農家の花卉栽培を支援し、収量、品質ともに向上につなげている。市内の知花小鎮に花卉研究開発・植物栽培エリア、産業融合サービスエリア、周辺域の発展をけん引する村落放射帯動エリアという三つのエリアを立ち上げ、種苗の研究開発や栽培を推進するほか、貿易展示センターやフラワーホテル、特色ある商店街などの業態を融合し、観光客100万人以上を受け入れている。
専門家は、多様性とパーソナライズ化の特徴を把握し、自然景観と人的資源のより良い組み合わせを推進すべきだと提案。単なる花見ではなく、親子学習や田園リゾート、療養リゾートなど多様なディープ観光への移行を実現し、消費の安定拡大促進に一層力を入れる必要があると語った。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年4月14日