国際エネルギー機関(IEA)はこのほど2024年中期石油市場報告書を発表し、クリーンエネルギーへのモデル転換の推進と一部主要エコノミーの経済構造の変化を考慮すると、石油の需要の増加率が今後持続的に低下し、需要が2030年にピークを迎えると指摘した。石油が大幅な供給過剰に陥るという。IEAの予測によると、世界の30年の石油供給水準は1日平均1億1400万バレルに近づき、需要を800万バレル上回る。OPECはこれに反対し、30年にピークに達しないどころか45年にも世界の石油の需要がさらに拡大し、1日当たり1億1600万バレルに増加すると予測した。石油の需要に関する今後の動きについて、2大専門機関が正反対の結果を導き出したのはなぜだろうか。
新エネ車、特に電気自動車(EV)の幅広い普及は、世界の石油への依存度を大幅に下げている。しかしAIの発展も石油の需要に重要な影響を及ぼす可能性がある。AIの応用は巨大なデータセンターにより大量のデータを処理し保存する必要がある。データ・センターの計算力、データ保存、設備冷却は電力消費の大きな需要を生む。ディープラーニングモデルのトレーニングでは設備の電力消費量がさらに増え、このような訓練は数日さらには数カ月続くこともある。またAI技術の各業界での導入が日増しに広がり、掘り下げられる中、その推論タスクの頻度と複雑性も上がる。例えば標準版のグーグルでの検索による電力消費量は平均0.3Whだが、ChatGPTへの質問は平均2.9Whと大きな開きがある。自動運転車のリアルタイムの意思決定は典型的なAI応用シーンだが、データと計算のより大きなサポートが必要だ。専門家は、AI業界全体の年間電力消費量は27年に85-134TWh(1TWhは10億kWh)にのぼると予想した。これはグーグル7-12社分、マイクロソフト8-14社分に相当する。
分かりやすく言えば、石油の需給の天秤において、片側ではEV発展により石油の需要が30年に減少し、別の片側ではAIを始めとする大規模な電力消費によりエネルギーの需要が激増する。これは石油を含む、化石エネルギーの需要の持続的な増加をけん引する可能性がある。2つの重要要素の力比べは、30年の世界の石油市場に大きな不確実性をもたらす。(筆者=林伯強・アモイ大学管理学院招聘教授、中国エネルギー政策研究院院長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年6月19日