中米貿易の緊張緩和が実現したばかりの状況下で、米国は相次いで新政策を打ち出し、情勢の先行きを再び不透明にしている。具体的には、①AI開発向け半導体に対する従来の輸出規制を撤廃し、関連制限を「勧告的ガイドライン」に調整したことと、②商務省傘下の産業安全保障局(BIS)が一連の細則を発表し、世界の企業が華為(ファーウェイ)の昇騰(Ascend)チップなどを使用する場合、米輸出管理規制に違反し商務省の処分対象となる可能性だ。
この「緩和」と「厳格化」を併せ持つ二つの政策は、米国の対中AI戦略調整を如実に示している。中国の半導体技術突破を前に、米企業が海外市場維持を迫られ輸出規制緩和に踏み切る一方で、規制の焦点を「技術獲得段階」から「技術応用段階」へ移し、中国AIエコシステムの拡大を阻止しようとしている。
しかしながら、この政策は必ずしも米国の思惑通りに進むとは限らない。産業・技術発展の面から見れば、米国が先端AIモデルにおいて優位を占めているものの、国内産業基盤の脆弱さで実用化・収益化能力が低いという構造的課題を抱えている。これに対して中国は、AI発展における応用志向を一貫して堅持し、整った産業基盤、巨大消費市場、多様な応用先を強みに、AI技術と産業が相互に促進し合う好循環のエコシステムを構築している。中国AI産業が現状の安定成長を維持し続ける限り、総合競争力を持続的に高め、米国との技術格差を縮小することが可能となる。
(筆者:王寧・商務部研究院世界経済研究所副研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年5月20日
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