中国月面周回探査プロジェクト副総合エンジニア、中国工程院アカデミー会員の姜景山氏がこのほど「2009月探査・地学科学フォーラム」の席上明らかにしたところによると、「嫦娥1号」衛星に搭載されたマイクロ波探査装置から回収されたデータを元に、中国の科学者が世界初の「マイクロ波月面」画像を描き出すことに成功した。同画像によると、実際に測定されたデータをベースに、月面土壌層の平均的厚さは5-6メートル、ヘリウム3の資源量は100万トン近くで、500万トンではないことが判明した。「科学時報」が伝えた。
ヘリウム3は一種の高効率かつ安全な核融合発電燃料であり、10トンのヘリウム3で中国全土1年間分のエネルギーをまかなうことができる。しかしヘリウム3の地球上での埋蔵量は極めて少なく、現在人類が既に探査した容易に確保可能なヘリウム3はわずかに0.5トン前後。しかし月面地殻浅層内には、地球上の人類が1万年以上に使うのに十分な100万トンのヘリウム3が含まれている。
「嫦娥1号」衛星マイクロ波探査装置が月面を周回する以前は、世界的にも月面軌道から月面全体に対するマイクロ波探査活動が行われたことはなかった。月面土壌層の厚さ、ヘリウム3資源量の分布などの一連の研究は、これまで米国「アポロ号」、旧ソ連「ルナ号」といった各探査衛星が月面着陸した際に収集した実測データをベースに分析判断されていたため、得られた情報にはかなりの不確定性や偏差がみられた。しかし姜景山氏が述べたように、今回の探査計画により月面軌道上からマイクロ波探査装置を利用し、月面全体の土壌層の厚さの分布を実際に測定したことは、世界初の月面全体のマイクロ波色指数分布データとなり、「マイクロ波月面」画像の構築成功につながった。
月のマイクロ波色指数データは月面温度、成分などの要素の総合的指標のほか、月面の物理特性、内部過程、月外部の各種要素が月に与える影響などを反映している。「マイクロ波月面」画像の作成成功により、月の起源と変化、宇宙の起源に関する問題解明に向け参考となる。姜景山氏によると、同氏の研究チームは現在、一部の代表的クレーターのマイクロ波特性についての研究を進めている。
中国が打ち上げに成功した「嫦娥1号」は月面周回飛行の前に、電磁波を利用して月面探査を行っており、可視光線、赤外線技術を活用し、世界的に既に「可視月面(Visible Moon)」「赤外線月面(Infrared Moon)」データ資源を構築しており、加えて今回の世界初となる「マイクロ波月面」画像作成の成功となった。可視光線、赤外線は主に月の表面の探査に利用されるが、マイクロ波は波長が比較的長いため、月面深くに入り込み、表層探査、厚さ測定、クレーター構造探査などの研究が可能となった。(編集HT)
「人民網日本語版」2009年6月30日