私は長く日本に住んでいる。苦労を重ねて、大学卒業後、それなりの日本企業に職を得た。かわいい同僚、高久美さんは、ちょうど私の真向かいのデスクに座っていた。彼女は中国語がちょっとできた。半年後、私たちは夫婦になった。
結婚後、なるべく日本人男性にありがちな亭主関白にならないように気を付け、帰宅すると私の得意技である料理を披露した。テーブルに色とりどりの料理を並べると、妻は感謝と賛辞の言葉を惜しみなく送ってくれた。私は鼻が高く、満足だった。しかし、そんな気分は長くは続かなかった。一か月後、突然妻は会社を辞めると言い出した。理由を尋ねると、同僚が自分の夫のことをからかったからだと言う。日本には、結婚後も働き続ける女性は同僚に笑われるという悪習があるのだ。妻も養えない男は男と言えないし、妻が苦しんでいる姿を見るのが忍びなく、彼女の退社に同意した。
主婦に「昇格」した妻は、とても張り切った。会社から家に帰ると、常に「おかえりなさい!」と言いながら玄関まで小走りで駆け寄ってくる。さらに「お疲れさま」と言い、スリッパを差出し、服を脱がせる。慇懃すぎる日本的礼儀作法は、時にイライラさせるほどだった。
「主婦」という言葉は、日本の女性にとって蔑視を意味せず、むしろ誇りを感じさせるニュアンスがある。女性は夫と子供の世話をするべきであり、それが国家の貢献につながるというのが、日本社会の一貫した認識であり続けている。そのため、社会に認められた女性の多くが、結婚すると率先して主婦になる。
「内務大臣」を得た私だが、中国人男性らしく、以前同様に帰宅後には料理を作るようにしていた。しかし私がまめに動けば動くほど、妻が落ち込んでいくのにほどなく気づいた。出勤前や帰宅後のあいさつは以前どおりだが、妻の気分はますます落ち込んできて、以前のような天真爛漫さが消えていった。眼を赤くしている時もあったことから、結婚生活に問題が生じていることに私は気付いた。
休みの日、妻を乗せ、河口湖までドライブにいった。気晴らしをさせると共に、そこでゆっくり話し合おうと思ったのだ。なぜこんなことになったのだろう。私は自問自答していた。
妻はちょっと迷ってから、私に打ち明けた。「中国の男性って自分勝手だと思わない? あなたは会社で頑張って、実績を残している。それなのに私の仕事まで奪うの? あなたのせいで、自分が価値のない人間だと思えてくる。私の立場になって考えてみて。私だってあなたみたいに充実したい」
日本女性は、こんな考え方をするのか! 中国人妻にとっては模範的ことが、日本人妻の眼から見ると欠点に変わってしまうのだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年10月28日