野鳥の楽園で富む農民 鳥を捕るより保護が大切
隆陽区と西側の騰冲市の境をなす高黎貢山の山中に百花嶺がある。この辺りは世界で最も高い標高にある熱帯雨林だ。ここには中国の全鳥類の37・5%、525種類が生息し、「世界的な種の遺伝子バンク」と称されている。
百花嶺の美しい野鳥(写真提供・懐彪雲)
百花嶺の人気者は野鳥だ。鳥たちはひっきりなしにさえずる。バードウオッチャーたちが音のする方に顔を向けても、その姿を捉えるのはなかなか難しい。しかし、現地の野鳥ガイドの侯体国さんには少しも難しいことはない。侯さんは、野鳥が残したわずかな痕跡からそのすみかを探し出す。それだけでなく、そのかすかな鳴き声から鳥たちの喜怒哀楽を聞き分ける。
侯さんのこうした特別な能力は、子どものころから鳥を捕って培われたものだ。今から30年ほど前の89年、ある野鳥撮影の愛好家夫婦が野鳥探しのため、侯さんに案内を頼んだ。撮影された野鳥はとても美しく、侯さんはかなりの報酬を手にした。そこで侯さんは、鳥を捕るより保護した方が良い、ということに気付いた。またある日、野鳥ガイドをしていた時のことだ。多くの鳥たちが壊れた水の管の周りにやって来ては、喉を潤しているのに気付いた。その時、野鳥用の水浴び場を作る考えが浮かんだ。早速作って置いてみると、飛来する鳥が増え、観察や撮影に訪れるバードウオッチャーたちもどんどん増えていった。
忙しく一人では手が回らなくなった侯さんは、村人たちを教え込んで野鳥ガイドに育てることにした。そのガイドたちに鳥の水浴び場の作り方も教えた。さらに長女の娘婿をこの仕事に引き入れ、次女の夫も町での仕事を辞めて手伝うことになった。こうして、今では百花嶺の野鳥の水浴び地は至るところに置かれ、撮影客でにぎわっている。
筆者が訪れた時、100人以上が宿泊できる侯さんの「農家楽」(農村民宿)は超満員。侯さんはバードウオッチャーたちを水浴び場へ案内。娘婿は宿泊客の受け付けを済ませると、学生たちを連れて自然学習の野鳥観察へと大忙しだ。こうして小さな野鳥たちは山林に彩を添え、村々を豊かに変え、百花嶺と世界の距離を近づけた。2016年から保山市が主催する「野鳥観察ウイーク」は、今では村の年に一度の国際的なカーニバルとなっている。
「コーヒー書記」が富裕指南
百花嶺から車で南に約1時間。潞江鎮にある新寨村に着いた。ここの山の斜面は一面緑のコーヒーの果樹だ。熟れた赤やまだ若い緑が混じるコーヒーの実は、サクランボよりちょっと小さめ。ちょっと揺すっただけで枝から落ちそうだ。
潞江鎮は雲南コーヒーの一大生産地だ。当地は緯度が低く海抜1000㍍前後で、雨量もたっぷりあり日照条件も良く、コーヒーの栽培にはぴったりの自然条件だ。だが、栽培に適しているからといって収穫が多いとは限らない。ここのコーヒー農家は、長年それぞれのやり方で栽培していて市場への対応能力が弱かった。コーヒー豆の市況に農家が踊らされ、豆の相場が良い時はコーヒーの木を植え、相場が悪くなると他の作物に植え換える――それを繰り返してきた。
そんな人たちが12年、当時村の外で建築の請負仕事をしていた王加維氏を村の書記に迎えた。そして、コーヒー栽培で村を発展させる「道案内」を探し当てた。その頃、王氏は年収50万元余りを稼いでいたが、書記になったら収入は一年5万元足らず。「みんなが豊かになれるのなら、自分の稼ぎが少ないなんてどうでもよい」。王書記のリードで大規模化した経営はすぐに結果を出した。現在、コーヒー農園は村全体に広まり、コーヒー文化ウイークも始めた。王書記は「コーヒー観光」を推進しており、新寨村は日々豊かになりつつある。