40年前、アフリカのある少年は、「空を飛ぶ」という夢を持って遠く離れた中国にカンフーを学びに来た。現在、彼は名実相伴う「武術の達人」になり、カンフー映画に出演したり、国際武術大会で審査員を務めたりし、中国武術の海外発展に貢献している。ガボン共和国出身の「外国人侠者」であるルーク・ベンザさんは中国網のインタビューに応じ、自身と中国武術の切っても切れない縁を語った。

中国武術は体を強くするだけでない

　ベンザさんは子供の頃からカンフー映画が好きで、ブルース・リーやジャッキーチェンに憧れ、いつか映画に登場する侠者のように「空を飛びたい」と思っていた。1983年、14歳だったベンザさんは父に別れを告げ、「カンフーの夢」を叶えるために独りで遠く離れた中国に来た。「北京首都空港で飛行機を降りた時、ふいに空を見上げ、空を飛ぶ人がいないのはどうしてだろうと疑問に感じた」と、ベンザさんは笑いながら話した。

　映画と現実が異なることに、ベンザさんは気を落とさなかった。1985年、彼は師匠から技術を学ぶために嵩山少林寺に行った。しかし、中国カンフーを身につけるには、まず言葉の壁をなくし、中国文化を知る必要があることにすぐに気がつき、北京に戻り、北京語言大学と北京体育大学で勉強し、中国語と武術の能力を大幅に向上させた。1990年代、ベンザさんは『龍在少林』（ロマンシング・ドラゴン）などの映画に出演、2007年にはテレビドラマ『李小龍伝記』（ブルース・リー物語）に出演し、ブルース・リーの米国での一番弟子ジェシー・グロバーを演じた。作中で、彼は「壁の上を飛び」、子供の頃の夢を叶えた。

　現在、ベンザさんは中国語を流暢に話し、ビジネスも成功させている。彼は武術学士の学位、中国武術七段を持つだけでなく、ガボン武術協会創設者、国際武術連盟伝統武術委員会副主任、国際レベル武術位審判員なども兼任している。

　ベンザさんは、中国武術は奥が深く、武術との縁によって多くのことを得たと感じている。「中国武術は自ら攻撃せず、和をもって尊きとすることを重んずる。武術は体を強くするだけでなく、人としての在り方も学ぶことができる。以前、自分は度胸がなく、何かあるとすぐに焦っていたが、武術を練習するようになってから、勇敢になり、視野も広くなった」とベンザさんは話した。

多くのアフリカ人が中国カンフーを学んでいる

　中国との関係ができてから40年、ベンザさんは中国武術普及の第一線で活躍してきた。2001年、国際武術連盟は国際オリンピック委員会に武術の五輪種目採用の申請を提出し、中国国家体育総局と2008年オリンピック北京組織委員会は大いに後押しし、国際舞台で普及活動を実施した。当時、ベンザさんは五大陸の代表の一員として、中国オリンピック招致チームに同行し海外でパフォーマンスし、中国武術の独特な魅力を伝えた。武術の正式種目採用は叶わなかったが、特別種目として北京オリンピック期間中に開催された。

　ベンザさんによると、国際武術連盟と中国武術協会はここ数年毎年、専門家をアフリカ、ラテンアメリカ、欧州、北米などに派遣し、コーチや審判員の育成などの武術関連の交流活動を行い、成果を上げている。「ブラジルといえば、まずサッカーが思い浮かぶ。海外では、中国といえば、多くの人が中国武術を思い浮かべる」と、ベンザさんは嬉しそうに話した。

　ガボン武術協会の創設者として、祖国での武術普及に力を入れてきたベンザさんは、「当初、10年かけて中国の専門家とパフォーマンスチームを定期的に招き授業や公演を行い、多くの人が武術に興味を持ち、中国武術がガボンのスポーツ庁とオリンピック委員会に認められるようになった。ガボンの武術代表は2年に一度の武術世界選手権大会に積極的に参加している。現在、アフリカ、特にガボンで武術はかなり普及しており、多くの若者が中国カンフーを学んでいる」と述べた。

　長年にわたり、ベンザさんは中国文化のさらなる海外普及に積極的に参与し、見届けてきた。彼は、「アフリカで、中国の龍舞と獅子舞は非常に人気があり、伝統の漢方薬も深く支持されている。武術を含む中国文化は世界とより深く融合していくだろう。中国武術を広めるため、今後も努力し続け、中国とガボン、および中国とアフリカの文化交流に貢献していきたい」と話した。

「中国網日本語版（チャイナネット）」2023年7月6日