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中国語学習フィーバーを目の当りにして
発信時間: 2010-01-27 | チャイナネット

林国本

 

さいきん、中国語を勉強する外国人がどんどん増えている。私が長年勤めていたメディアの近くにも、外国人の若者たちに中国語を教えている正規の学校があり、時々、日本の週刊誌や新聞などを借りに古巣に足を運び、ついでに近くのレストランで食事をしているとその学校の生徒、学生が昼食の時間にどっと入ってきてランチを食べているので、いろいろ雑談してみると、中国語を勉強しておくと、一生食いはぐれることがないからだ、と率直に語る若者もいた。

私は子供の運転で浙江省の義烏市という日用雑貨の集散地に見学に行ったことがあるが、その小さな町のレストランでも多数のアラブ系、アジア系のバイヤーの姿を目にしたが、みんな中国語をぺらぺらしゃべっているので、私は「芸は身を救う」という日本の諺を思い出して一人悦に入っていた。語学というものも、メシのタネになるのだなあ、と。

国内のフライト便の中でも、アジア系の若者たちが、上手な中国語を使って会話を交わしているので、どこで勉強したのかと尋ねると、本国で二年間勉強し、さらに中国に短期留学したということだった。

中国の近代化により、国際的地位の向上にともない、中国語を勉強する人の数はさらに増えるに違いない。とにかく、もうカナダ人の漫才師さえ現れているご時世であり、中国のテレビでも、時々、外国人による漫才、喜劇の寸劇が演じられるようになった。外国人が一生懸命中国語を勉強する時代になったわけだが、中国人も英語やフランス語、日本語を熱心に勉強する時代でもあるので、実に面白い世の中になったものだと喜んでいる。中国ではすでに英語、スペイン語などのテレビ放送のチャンネルもあるし、中国の若い公務員の中には、英語のテレビ番組にゲスト出演して、キャスターとペラペラ英語で対話している番組に、私は自分の英語の理解力をテストするために時々何時間も耳を傾けている。

余談になるが、中国語を熱心に勉強している日本人の姿も見かけることもあるが、日本人のほとんどは実務とか学術研究の分野で活躍しているようで、漫才師とかコントの世界でパフォーマンスしている日本人をみかけたことはない。これは日本人の特異性とも関連があるのかもしれない。日本人は日本人同士や会社の同僚たちとのナミニケーションでは、ハメをはずしてはしゃぐタイプもいるが、国際化、国際化とマスコミで騒がれながらも、外国人とのお付き合いでは「ムラ社会的特色」が目立ち、引っ込み思案で、いい意味での社交能力に欠けている。しかし、そうだからといって、日本人異質論をここで唱えるつもりはない。要するに、深層文化の違いなのかもしれない。

日本には吉川幸次郎(故人)ら、数多くの中国の古典、文化に精通した学者が輩出しているのだから、漢学、東洋学という大きな山脈からみれば、決して漫才師が現れた国に劣るものではない。ただ、庶民のレベルで考えてみると、この庶民の世界で日本人の姿を見かけないことは、長年日本語をメシのタネにしてきた人間として一抹のさびしさを感じる。

とにかく、今や中国では「対外漢語教育人材」という資格を持った人間が大勢活躍しており、国外にも派遣されている。21世紀は中国語が英語の次に重要な言語のひとつになるかもしれない。なにしろ、この地球上には13億以上の人間がこの言葉を使っているのだから。とくに、中国語を勉強しておけば、食いはぐれることはないという、庶民の生活観からにじみ出た言葉を耳にするたびに、自分が子供の頃に「英語さえ身につけておけば、苦労はしないだろう」という大人たちの言葉を思い起こして、中国という国の地球上での重みを実感している昨今である。

 

「チャイナネット」 2010年1月27日

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