中国の書道は数千年の歴史を有し、西安碑林は数千年の間に生みだされた精粋を集めたものである。それは南城の陝西博物館内にある。
中国には、古くから重要な通告、記録を石に彫る習慣があり、そうすることによって大衆はいつでも読むことができ、永久に保存ができた。西安は最も早くから中国文明が発達した地のひとつであり、そのため古代からの石碑の数も非常に多い。これらの石碑を良い状態で保存するために、時の政府がこれらの石碑を1カ所に集めることが宋代から始められた。その後も石碑はたくさん作られてここに集められ、今日の大規模な西安碑林の基礎となったのである。
現在の碑林には、漢・魏・隋・唐・宋・元・明・清各代の石碑が全部で2300余り収蔵されており、これらが六つの大きな室に陳列されている。
碑林を歩いていると、各時代の異なる芸術的風格をうかがうことができる。漢の隷書は爽快な感じの中にも素朴な味がうかがわれ、魏書はゴツゴツしているが重厚である。唐代に、書は芸術として完成したものになり、顔真卿の書は豊満、剛健、素朴の感にあふれ、柳公権の書は繊細だが力強く美しい。褚遂良の力強くてていねいな筆使いは、後世の書道家の模範となった。宋の徽宗・趙佶(1082〜1135年)の「痩金体」は繊細で格別の風格がある。元の趙孟頫、明の董其昌、清の康熙帝もここにすばらしい墨跡を残している。
碑林にあるこれらの石刻は重貴な芸術作品としてだけでなく、史料としての文献価値も高い。一号室に陳列されている唐代の「開成石経」は、中国の「聖書」といわれる十三経を彫ったものである。唐代は、印刷術はまだ発明されていなかったので、書籍、文書類はすべて手書きであり、多くの誤りがあった。十三経は科挙試験の必須科目でもあり、誤りを放置しておくわけにもいかず、政府はついに十三経を石に彫って定本としたのである。ほかに有名なものとして『大秦景教流行中国碑』があり、これには、キリスト教ネストリウス派がキリスト教をローマから中国に伝えた経過が彫られており、文化交流の証拠となっている。
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