中国の気候変動専門家は30日、国際エネルギー機関(IEA)が28日に発表した報告「世界エネルギー展望2011」について、中国の二酸化炭素排出量に関する予測結果は不正確だと反論した。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。
報告は中国の二酸化炭素の「歴史排出量」と「1人当たり排出量」が2015年までに欧州を抜き、米国に非常に近づくと予測している。これについて中共中央編訳局の気候変動問題専門家、曹栄湘氏は「IEAの予測は論理と計算手法に明らかに誤りがある。さらには、中国など発展途上国の発展権益を極力なおざりにしているようだ」と指摘する。
現在、国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)が南アフリカ・ダーバンで開催中で、「歴史的排出量」と「1人当たり排出量」の扱いが論争の焦点の1つとなっている。これは二酸化炭素排出量削減と地球温暖化抑制の義務と責任の分担に関係する。
IEAがこの時に、中国の二酸化炭素排出量についてこのような予測結果を発表したことで、交渉における中国の立場は明らかに弱まる。IEAは先進工業国である経済協力開発機構(OECD)加盟28カ国を代表している。
中国は国連気候変動交渉で、欧米など先進国が二酸化炭素排出削減と大気温度上昇抑制の主要な責任と義務を担うべきだと主張し続けている。
現在までの大気中の累計温室効果ガスの80%近くは先進国が排出したものだ。中国の歴史的排出量は残りの20%の一部に過ぎない。1人当たり排出量も先進国の3分の1、4分の1、さらには5分の1程度に過ぎない。
中国人民大学環境学部の鄒驥・副学部長は「IEAの予測結果は驚きの一言だ。周知のように、欧州は200年前に産業革命を始め、最も早く工業化を実現した。一方中国はまだ工業化の中・後期段階にある。どうやって排出量を増やせば、歴史的排出量と1人当たり排出量で欧州を超えられるというのか。ましてや100年前にすでに世界最大の工業化強国となった米国を上回るだなんて。中国の排出量の推移を予測するには、今後の自発的な排出削減要素を考慮しなければならないが、IEAがそうしていないのは明らかだ」と指摘した。
中国政府は2009年に、2020年までに単位GDPあたり二酸化炭素排出量を05年比で40潤オ45%削減するとの行動目標を発表するとともに、これを拘束性指標として国民経済・社会発展の中長期計画に組み込んだ。2020年までに一次エネルギー消費に占める非化石エネルギーの割合を15%前後にまで高めること、森林の二酸化炭素吸収量を増やし、森林面積を05年比で4000万ヘクタール増やし、森林蓄積量を同13億立方メートル増やすことも計画している。
中国はこうした約束に止まらず、すでに相当な排出削減効果を上げている。今年上半期までに単位GDPあたりエネルギー消費を05年比で累計13%引き下げた。これは二酸化炭素15億トンの排出削減に相当する。このほか、クリーン開発メカニズム(CDM)への参加を通じた認証排出削減量の成約量も世界全体の大部分を占めている。
曹氏は「IEAは予測を行う際、先進国から中国など途上国への炭素排出のシフトの問題も十分に考慮すべきだ」と指摘する。
「人民網日本語版」2011年12月1日