加藤 嘉一=文
日本の救助隊員たちは現場で中国の救助隊員たちと救助のやり方について意見を交換した
5月3日土曜日。北京大学110回目の誕生日の前日にあたるこの日、胡錦濤国家主席が同大学を訪問した。教育・研究の発展状況を視察すること、教員と学生を激励することが目的であったようだ。私も留学生の代表として胡主席にお会いする機会に恵まれた。主席と私は10秒ほど、互いの手を握り合った。その間、私は目の前にいる国家リーダーの瞳から目を離さなかった。続けて、3日後に迫った主席の日本訪問が成功するよう、エールを送った。主席はややお疲れのようだったが、その表情は信念に満ちていた。「必ず成功させる」
◇毒ギョーザ事件、チベット問題、聖火リレーなど紆余曲折を経て実現した胡主席の訪日。5日間という日程は、短くない。日中首脳会談、「第4の政治文書」の調印、早稲田大学での演説、福原愛さんとの卓球マッチなど一連のアジェンダを、私は北京で眺めていた。10年ぶりに挙行された中国の国家主席の訪日及び日中共同声明の内容にどのような歴史的意義を見出すか。「戦略的互恵関係」をどう推進し、カタチにしていくのか。両国国内或いは2カ国間で、オープンかつ活発な議論がなされるべきだと思う。
私は中国における言論活動の一環として、香港系フェニックスサイト(鳳凰網)のブログで、中国の社会問題、日中関係、国際情勢などについて日々、コメントしている。日本人としてモノを言うだけに、読者からの反応は厳しく、しばしば「お叱り」を受ける。胡主席の日本訪問期間中、私も多くを語ったが、読者からの評価は「褒め一辺倒」だった。「日中友好万歳」「中国人は日本人を尊敬している」「お前は日中の使者だ、がんばれよ」など。感情的に罵るようなコメントはほとんど見られなかった。
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