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外務省大臣官房参事官 井出敬二:大震災をどう総括するか
発信時間: 2009-05-13 | チャイナネット

第三に、四川大地震に際して日本からも国際緊急援助隊救助チームが派遣されました。彼らの活動がどのようなものだったのか、反省点は何か、日本が行う国際緊急援助活動をどう改善していくべきか、ということに関連して、最近、日本の国会(本年4月1日の参議院国際・地球温暖化問題に関する調査会)においても意見交換、議論がなされました。国際緊急援助隊救助チームの活動の総括とも言えます。私も興味深く議事録をインターネットで読みましたので、以下の通りご紹介したいと思います。

四川に派遣された国際緊急援助隊チームの副団長であった高瀬初雄氏(警察庁長官官房国際課課長補佐)および原修氏(東京消防庁救助課長)が四川での体験、感じたこと、今後の活動のあり方などについて述べています。両氏は、日本の国際緊急援助隊の派遣に関する法(1987年施行)ができてからの活動状況、救援される側の期待と救援する側の能力の間のギャップを小さくすることの必要性(救援チームが都市型か否かの問題)、被災地に迅速に行くための交通手段の確保の重要性、ご遺体の収容のやりかた、日頃の訓練・自己研鑽の重要性、災害に取り組むための機材の開発の問題などについて貴重なご意見を述べています。この貴重なご意見を踏まえて、更に日本の国際緊急援助活動が世界の役に立つように祈ってやみません。

ご遺体に対する隊員達の黙祷の写真が新華社で流されて有名になりましたが、黙祷をすることになった経緯、救援活動中における現地の中国人の方との心あたたまる交流についても色々興味深い説明がありますので(注)、関心のある方はインターネットで議事録全文をご覧下さい(http://kokkai.ndl.go.jp/ で「四川大地震」で検索すれば簡単に当該議事録を探すことができます。)これらは、救援活動において、心の側面が重要だという点を示唆していると思います。

私も四川大学に日本語教育機材を日本政府から供与する(文化無償ODA)関係で同大学を訪問したことがありました。その際知り合った日本語教員の方からEメールをもらい、日本から派遣された医療チームの通訳その他お手伝いをしたいという申し出を受け、その要望を関係者に伝達しました。四川大学他の日本語教育関係者・学生さんたちが種々ご尽力いただいたことに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

被災地における心の交流の際に、社会文化・国民性・宗教意識の相違を念頭に置いておき、この分野の専門家の助言をどう仰ぐかという点も、将来十分に考察されるべきだと思います。この点も総括の中で忘れていけないと思います。四川大学の日本語専門の方にも、いつかいろいろなご意見、ご感想をおうかがいしたいと思っています。

(注)原氏は以下の通り発言されています(下線は井出)。

「・・・それまでずっと中国製のお菓子とミネラルウォーターでずっとやっておりまして、夕飯に中国製のカップヌードルが出ました。JICAの方が支援で現地で仕入れてくれたんだろうというふうに我々そのカップヌードルをいただいたときは思ったんですけれども、後々聞いてみますと、現地の方が中国政府から自分たち用、被災民用にもらっていたカップヌードルを日本隊に食べてくださいということで出した、それが我々の夕飯でございました。それから今度は翌朝になりまして、被災地ですので衛生的に沸かしたお湯なんですけれども、非常に貴重なものだと思いますが、それが日本隊に飲んでくれ、飲んでくれということで住民の方がお持ちいただいたり、それから、その場所を引き揚げるときに、今度は中学生の女の子が我々の救助隊に、日本隊の人、これ持っていってくださいということでチョコレートを、非常に貴重だと思いますね、被災地では、それをいただいたりしました。」

「・・・第一現場から次の今度は中学校、北川県にいくときに、道々に中国の人がみんなプラカードを持っておりました。通訳の人に何て書いてあるんですかと言ったら、日本隊ありがとうというふうに書いてあると。そういう意味では、一番最後、ホテルに戻ったとき、もう夜中の十一時過ぎで、非常に住民の方がいっぱい迎えていただいたということで、行った救助隊員は生存者を救出できなかったんで非常に悔しい思いして絶対満足していないんですが、中国の方たちからの評価は良かったのかなというふうに考えております。」

(本文における意見にわたる部分は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織の意見を述べるものではありません。)

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