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外務省大臣官房参事官 井出敬二:大震災をどう総括するか
発信時間: 2009-05-13 | チャイナネット

 

冒頭、四川大地震の犠牲になられた方々、被災された皆様に心からのお見舞いの気持ちを、また、救援、復興、支援活動にあたられてきている多くの方々に心からの敬意を表したいと思います。

私は、震災被害をどう受け止めたらよいのか、また私たちは何をしてきたのか、この悲惨な震災をどう総括したら良いのかということについて考えてみました。それぞれの立場の方が様々な総括をされることと思いますが、私の限られた視点から、若干の感想など(あくまでも私個人の感じたことです)を以下の通り書かさせていただきます。

まず第一に、日本人が古来、大震災をどう受け止めてきたかということについて考えてみました。鴨長明の「方丈記」を読み返して「チャイナネット(中国網)」の私のブログに書きました(http://japanese.china.org.cn/jp/ide/2008-12/15/content_16952909.htm)。

この拙文はサーチナ中国情報局に転載して頂きました

(http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0331&f=column_0331_004.shtml)。

また、寺田寅彦氏の随筆も読み返してみました。彼は「天災は忘れた頃にくる」という名言を残したことで知られている著名な科学者であり、また名文家でもあります。彼が大地震についてとても多くの文章を残していることを再認識しました。彼が書いた文章の紹介も「チャイナネット(中国網)」の私のブログに書きました

(http://japanese.china.org.cn/jp/ide/2008-12/18/content_16974342.htm)。

こちらもサーチナ中国情報局に転載して頂きました。

(http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0414&f=column_0414_001.shtml)

鴨長明も寺田寅彦も、天災を嘆いているだけではなく、まず事態を客観的に把握しようとしています。鴨長明は、悲惨な被害をうけたことをいずれ人々が忘れてしまうということを恨んで言っています。これは天災は忘れてはいけないという彼の気持ちを含意しています。寺田寅彦は、天災と人間の営みとの関係に注目し、人間はどう対処すべきかということを色々具体的に提案しています。彼は、「あらゆる災難は一見不可抗的のようであるが、実は人為的のもの」という認識も示しています。逆に言えば、人が十分準備をすれば、災害の犠牲を少なくできるとの期待を示しています。準備をするためには、災害の犠牲の原因を徹底的に究明しないといけないとも述べています。科学者らしい総括だと思います。

今回彼の随筆を再読してちょっと驚いたのですが、彼は、日本における災害(地震・風害)で小学校校舎の倒壊が多かったことに触れており、その原因・事情についても様々な考察をしています。ご関心のある方は、岩波文庫『寺田寅彦随筆集』(第5巻p61)をご覧下さい。

「方丈記」で描かれた大災害の鮮烈なイメージは、堀田善衛氏(=「方丈記」を読み込んで「方丈記私記」を執筆した)、そしてアニメの宮崎駿監督(=堀田善衛氏と親交があり、「方丈記私記」の戦乱場面を『ハウルの動く城』で映画化した由)にまで受け継がれています。映画『ハウルの動く城』では、「方丈記私記」からイメージを得たという戦乱場面が示された後、最後は主人公ソフィーの愛が勝利するということになります。(短く説明しましたので、映画『ハウルの動く城』を見ていない方にとっては、分かりにくい説明となってしまい、すみません。是非、この映画をご覧下さい。)つまり、悲惨な災害を、愛が克服し勝利するという芸術的な総括となっているように思います。

第二に、四川大地震の後、被災者への支援活動のために中国の多数のボランティアが活発に活動されました。阪神・淡路大震災(1995年1月17日)の後も、日本の多数のボランティアが活発に支援活動に参加したことを思い出しました。このことから、この1995年は日本で「ボランティア元年」と言われています。その後、ボランティアの活動を容易にするように、NGO、NPO関連の法制度もかなり整備されました。中国で環境保護活動をしているNPOを私は個人的に応援しているのですが、最近中国の友人達と意見交換する機会がありました。このやりとりは、中国の雑誌『財経』のブログに拙文(中国語)を掲載したので、ご関心のある方はご覧下さい(http://blog.caijing.com.cn/expert_article-44-679.shtml)。このブログで私が言いたかったことの一つは、日中の間で制度が異なっていても、内面的・精神的な共感を基にすれば、日中の市民どうしが協力することはできるはずだということです。市民どうしの連携の強化も、各国の大震災の後の一つの総括になるべきだと思います。

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