雨はまだ降り続き、やむ気配もない。筆者は傘をさし修善寺の美しい庭園に入った。湿り気を帯びた春の空気に襲われた。
筆者は多くの和風庭園を訪れたことがあるが、雨の中を歩くのはこれが初めてだ。パラパラと降る雨の音を聞いていると、古い詩に詠まれた光景の中に足を踏み入れたかのようだ。
和風庭園は本質的には中国風の庭園から生まれ、和風の審美を取り入れ形成された、よりきめ細やかで優雅な景観だ。中国風の庭園を中国画の「写意」で例えるならば、和風庭園は「工筆」で例えられる。そのため直感的に言えば、前者はより洒脱かつおおらかで、後者はより詳細で美しい。
島国の日本は地域的な制限を受けるため、目にできる自然景観の多くが温帯と寒帯の風景となる。このやや物足りない風景は、こだわり抜いた庭園の美しさを生んでいる。水、橋、建物、木、草、砂、花、苔など、庭園内に置かれるすべてのものに意味がある。これらすべては自然界から得られるが、自然を上回る形態で独自の命を手にしている。