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japanese.china.org.cn |06. 03. 2024

地域共同富裕の旗艦プロジェクト――中国ラオス鉄道体験記

タグ: 中国ラオス鉄道体験
人民中国  |  2024-03-06

東洋学園大学客員教授 朱建栄=文・写真


運命共同体の象徴 


   2021年末の開通以降、中国ラオス鉄道にはぜひ乗ってみたいと思っていた。ジャングルをくぐり抜ける感覚を体験したいというのはもちろんだが、この鉄道は「一帯一路」イニシアチブの旗艦プロジェクトであり、中南半島(中国の南、インド亜大陸の東にある東南アジアの半島)の中心部に入り込む初の鉄道幹線で、東南アジア全体にも大きなインパクトを与えるものと予感したからだ。 


   昨年夏、念願のチャンスが訪れた。タイのバンコクで開かれる国際会議への参加だ。バンコクまでの直行便ではなく、あえて雲南省経由でバンコクに向かえば、夢の鉄道に乗ることができる。 


   鉄道建設を巡って中国とラオス両政府の間で初の話し合いが持たれたのは、早くも01年のことだった。両国首脳は09年に鉄道の共同建設について正式に合意し、翌10年にはラオスのチュムマリー国家主席(当時)と中国の胡錦濤国家主席(当時)の立ち合いで協力覚書を締結。この国家級プロジェクトの予算と計画は、12年にラオス特別国会で承認された。15年11月、詳細を決定した政府間鉄道協力協定が調印され、12月には起工式を実施し、翌16年から本格的に建設がスタートした。 


   21年10月、5年の歳月を費やしたレール敷設が全線で完了し、同年12月3日から運用が始まった。開通式典ではトンルン国家主席が、「中国ラオス鉄道は、近代的なインフラを求めるラオス国民の夢がかなったもので、両国の運命共同体としての関係をも象徴している」と高らかに宣言した。 


   この鉄道の建設は決して容易ではなかった。ラオスは国土面積の8割が山脈と高原で、特に北部の起伏が激しい高原地帯には、人間の侵入を阻むような密林ジャングルが広がっている。かつてベトナム戦争で、米軍はラオス領内に1億発以上の爆弾を落としたため、今も多数の不発弾が残っている。さらにASEAN(東南アジア諸国連合)諸国の中でも低所得国に属するラオスが、果たして巨額の建設費用を負担できるのかなど、さまざまな問題が待ち構えていた。 


時速160㌔限定の理由 


   鉄道建設に関する政府間協定では、当初から「共同建設」と位置付けられ、双方が協力するBOT方式を取り、フランチャイズ期間は50年とされている。中国国家鉄道集団所属の「中国鉄道昆明局集団」と、ラオス国家鉄道会社との間で、「中国ラオス鉄道」(LCRC)合弁会社が設立され、指揮を担当した。総工費約60億㌦のうち、中国とラオスはそれぞれ28%と12%出資し、残りの60%は中国輸出入銀行からのソフトローン(2%、30年間)で賄われた。 


   着工当初は中国人スタッフが主に企画や測量などを担当したが、建設開始とともにラオス人技術者や乗務員への訓練が始まり、工事の後半はラオス人スタッフが育ったため、現場の主力となった。現在ラオス国内を走る列車の乗務員は全てラオス人で、管理や整備担当の大半も現地スタッフだ。 


   ラオスはこれまで、首都ビエンチャンとメコン川対岸のタイの町を結ぶ3・5㌔の古い鉄道しかなく、新鉄道の建設と運用はほぼ完全に中国式を踏襲した。 


 


   鉄道は全長1035㌔で、ラオス領内の422㌔は中国と同じ標準軌(軌間1435㍉)が採用されている。険しい地形と軟弱地層、環境保護に配慮した76本のトンネル(うち9000㍍以上が3本)が通り、その全長は197㌔で、全体の46・57%を占めている。橋梁は167本(うち1500㍍級が2本)で全長62㌔に達し、全体の14・9%を占めている。 

現行は電化の単線鉄道で、客車の最高時速は160㌔、貨物車は時速120㌔だ。ラオス国内にはヴァンヴィエン、ルアンパバーンなど七つの主要駅を含む20駅が設置されており、最終的には31駅となる予定という。 


   中国国内を走る高速鉄道は時速250㌔から350㌔で、最近開通したインドネシアのジャカルタ–バンドン高速鉄道も時速350㌔なのに、中国ラオス鉄道は160㌔に制限されている。ラオス側政府関係者も、当初は時速200㌔以上を希望したが、中国の専門家は慎重に現地調査と計算を行った上で、速度が上げられない理由を以下のように説明した。 


   ①客車と貨物車の兼用路線なので、バランスを考える必要がある。 


   ②時速を上げると建設費用が大幅に増加し、ラオス側の負担が重くなる。 


   そして、近い将来に時速200㌔の実現と複線化という「夢」を共有することで、最終的にラオス側からの理解を得ることができた。 


スムーズな国境通過 


   昨年7月28日、私は念願の中国ラオス鉄道に乗ることができた。 


   この鉄道は21年12月に旅客輸送が始まったが、当初は新型コロナウイルス対策や通関手続きの調整が間に合わず、中・ラオスそれぞれの国内区間で運行した。昨年4月13日、全路線を通じた旅客輸送が始まり、中国側の起点である雲南省昆明南駅とラオス側の起点ビエンチャン駅から、毎日1往復が本国時間の午前8時8分に出発、8駅に停車、片道10時間30分という本格的な国際列車としても運行が始まった。出入国手続きを国境駅の磨憨(中国側)とボーテン(ラオス側)の構内で行うため、停車時間が1時間半かかったが、通関手続きの簡素化や運行の合理化を模索した結果、昨年10月以降は全線の運行時間は9時間26分と64分短縮された。 


   私が主に体験したかったのはラオス国内区間だったので、東京から上海経由で雲南省最南端のシーサンパンナ(西双版納)へと飛んだ。そこで高速鉄道に乗り換えて国境のモーハンに到着し、国境を越えてラオス領内の最初の駅ボーテンで中国ラオス鉄道に乗車した。 


   中国国内の高速鉄道のチケットは、「中国鉄路12306」というアプリをスマホにダウンロードすれば、日本にいながらにして購入できるが、ラオス国内の列車のチケットは、通常は入国してからでないと購入できない。言葉や切符売り場の場所などに不安があったが、さらに調べてみると、中国の旅行社が代行業務を行っていることが判明、手数料20元(約400円)を払って事前に入手できた(写真④)。ちなみに昨年3月以降は、モバイルアプリの「LCRチケットアプリ」でラオス国内区間の乗車券を購入できるようになっている。 


 


写真④ 


   ラオス国内では毎日1便の国際列車以外に、時速160㌔の「準高速」列車が毎日2往復と、普通列車が1往復走っている。私は午後15時15分(現地時間)ボーテン発の列車を予約した。 


   中国からの出国手続きは簡単だった。電子チップが入っている中国パスポートなら、自動識別機を通過するのに2分もかからなかった。ラオス側の入国ビザの取得は、各国のラオス大使館での発行、オンラインで申請する電子ビザ(E-Visa)、入国管理局で申請する到着ビザ(VOA)の3種類があるが、私は電子ビザを事前に取得して入国した。



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