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japanese.china.org.cn |06. 03. 2024

地域共同富裕の旗艦プロジェクト――中国ラオス鉄道体験記

タグ: 中国ラオス鉄道体験
人民中国  |  2024-03-06

「神秘の国」へ観光客殺到 


   国境から10㌔の地点にあるボーテン駅は、広い道路の両側が建築ラッシュで、高層ビルも多く見えた(写真①)。この町は主に中国が開発を請け負っているため、「ラオスの深圳」と呼ばれている。 


   雄大な駅舎(写真②)はラオスの伝統建築のスタイルとラオスで好まれる色合いを採用し、中・ラオス共同で設計された。駅名はラオス語、中国語、英語の3言語で表記されている。

 

   構内のデザインは中国の駅舎とほぼ同じだが、「僧侶専用席」が設けられている(写真③)のを見て、仏教の信仰心が強い国にやって来た、という実感が湧いた。 


   ラオス国内を走るこの準高速列車は、ラオスの古代ラーンサーン王国の名とメコン川上流を指す中・ラオス共通の呼び名にちなみ、「瀾滄(ラーンサーン)号」と命名されている。 


 


写真①~③


   午後3時過ぎ、憧れの列車にようやく乗車した。車内はほぼ満席。今までは首都ビエンチャンと国境の間に道路しか敷設されておらず、2日を費やす必要があったが、それが3時間半に短縮されたため、乗客の多くはラオスの人だ。次は途中駅のルアンパバーンなどにある世界自然遺産の秘境を目指す海外からの観光客。ビジネスチャンスを察知した、中国の企業関係者も少なくない。 


   開通から2年、ラオス領内だけでも延べ403万3000人が利用し、乗車人数は初年の140万人前後から大幅に伸びた。昨年12月30日の一日の乗車人数は、1万2585人を記録した。 


「ランドリンクの国」に変身 


   通過駅に貨物列車が止まり、付近に物流倉庫が立ち並んでいるのが車窓から見えた。ラオス側にとってこの鉄道は交通の利便性のみならず、経済発展の起爆剤としての夢が込められたものだった。 


   中国の「一帯一路」構想は、当初から相手国の発展戦略との融合を目指すことが提唱されていたが、このチャンスをいち早く生かそうと決めた国の一つが、ラオスだった。他国に囲まれるという閉塞感と利便性の悪さに悩んできた「陸の閉鎖国」は発想を転換し、15年9月にソムサワート副首相は、中国ラオス鉄道をてこに「ランドリンク国(land-linked Country)」になるという国家戦略を発表した。 


   陸で点と点をつなぐことを意味する「ランドリンク」という言葉は、ラオスの造語だが、16年に中国の「一帯一路」とラオスの国家開発戦略「コネクティビティーの良いランドリンク化」のドッキングが合意に至った。さらに17年11月に習近平国家主席がラオスを訪問した際、ドッキングの加速化が宣言された。 


   前年の16年にラオス政府は「最貧国」ランクから脱却し、年成長率を7・5%に伸ばすという30年までの野心的な発展戦略を制定し、その夢の実現への一歩として、中国ラオス鉄道の共同建設に賭けた。 


  


   鉄道開通に伴い、ラオス側では関連する物流、交通、貿易、旅行などの各業種での新規雇用が10万人以上生まれ、黄金ルートは特に物流の面でラオスのテイクオフを力強く支えた。現地の報道によると、ラオス国内の貨物輸送コストは鉄道開通で20~40%減、ビエンチャン~昆明間は40~50%減になったという。開通1カ月後、ラオスの輸出入は早くも長年の赤字から黒字に転じた。23年末までに同鉄道で国境を通過した貨物輸送量は累計640万㌧に達し、特にこの一年の輸送量は、前年比で95%も急増した。輸送貨物の種類も2700種余りに増加した。 


   物流は目覚ましく効率化が進んでいる。22年12月、中国側のモーハン口岸に「出入境果物指定監督場」が開設され、昨年9月には新たに10本の発着線と入換線が作られた。続いて首都のビエンチャン駅近くに中国の植物検疫(SPS)センターが設置され、果物の通関がより迅速になった。「スマート税関」の推進で先進的な鉄道コンテナ検査装置(H986)が設置され、1~2分で列車1本のスキャンが終了する。さらにレーダー照射による消毒液の噴霧や放射線検出ドアなどのハイテク監視装置により、リスク排除と総合的なチェック機能が大幅に向上し、「安全で効率的な通関」という理想を達成した。 


タイ産ドリアンが大人気 


   ラオス区間の貨物輸送は基本チャーター便で、当初の1日2~3往復が現在は14往復にまで増加している。ラオスからの輸出は大半が鉄鉱石、銅、鉛、スズ、アンチモンなどのラオスで採掘された鉱物資源や、天然ゴム、キャッサバ、木炭、果物、コメなどの農林産物だが、近年はラオスへの投資ラッシュが奏功し、初期加工の工業製品も輸出されるようになっている。途中駅のルアンパバーン駅には巨大なLC国際物流倉庫センターができ、中国、ラオス、タイの輸送物資の集積ハブになっている。 


   この鉄道は文字通り「ランドリンク」の力を見せ始めており、10カ国以上の鉄道とのつながりがすでに生まれている。22年7月にはタイ国鉄(SRT)との接続が始まり、ビエンチャン駅の積み替え施設のほか、タイのメコン川レムチャバン港近くには、中国鉄道用のコンテナデポも設置されている。マレーシアのクアラルンプール駅とラオスのタナレーン駅を結ぶ貨物輸送も行われている。以前は1週間以上を費やした鮮度が命の果物の輸送も、鉄道の開通で時間が大幅に短縮。例えばタイで採れた新鮮なドリアンは、わずか3日で中国国内の店頭に届けられ、人気を博している。 


   この大動脈は、東南アジア諸国を中国や全世界に一段と近づけた。東南アジア諸国からは果物、鉄鉱石、ゴムなどの特産品が中国へ、中国からは機械・電気製品やハイテク製品が各国へと送られる貿易の活性化は、投資、サービス、金融など、幅広い分野での協力も促した。現在中国では、環渤海、長江デルタ、珠江デルタ経済圏を含む31省(自治区・直轄市)が、この鉄道を定期的に利用している。 


   さらに、タイやマレーシアなどの品物を満載したコンテナ車が、中国ラオス鉄道経由で「中欧班列」(中国と欧州を結ぶ貨物鉄道)の大動脈に乗って欧州に届けられている。日本貿易促進機構(JETRO)によると、ASEAN–中国間の自動車などの部品の輸送手段として、このルートを活用しようという動きが日系企業の中にも出ているという。

 

   私の3時間半の旅行はまたたく間に終わった。降車したビエンチャン駅前の騒がしさは、数十年前の上海や広州駅前のような熱気を思い起こさせた。

 

「共同富裕」を目指して 


   この体験で、ラオス側がこの鉄道に国の躍進の夢をかけた気持ちが分かったような気がした。ラオスのソマート国民議会副議長は、昨年10月に行われたCCTV(中国中央電視台)の独占インタビューで、声を詰まらせながら次のように語った。「ラオスは海の出口がない内陸国で、国民にとって自国の鉄道を持ちたいというのが、長年の夢だった。それが今日ようやくかなった」「中国が隣国であったのは、非常に幸運なことだった」。トンルン国家主席は、二つの国の友情と希望を載せた鉄道について、「単なる出発点に過ぎない」と、早くも未来を見据えている。 


   


   この鉄道が「債務のわな」になるという臆測は、最近めっきり鳴りを潜めている。世界銀行が20年に発表したレポートによると、長期的に見た場合、この鉄道はラオスの総所得を最大21%増やす可能性があり、世界のサプライチェーンとのつながりを提供し、投資家から見たラオスの魅力をさらに高め、観光産業も恩恵を受けるとされている。 


   鉄道の開通に合わせ、ラオス政府は投資政策とビジネス環境の改善に向けた改革を行っており、鉄道沿線の新都市、首都から中国国境までの高速道路、新空港、その他の国際物流施設など、インフラレベルの向上にも力を入れている。21年11月24日、国連総会は国連開発政策委員会の勧告に従い、ラオスは遅くとも26年には「後発開発途上国」から卒業できるとする報告書を採択した。 


   中国ラオス鉄道とインドネシアのジャカルタ–バンドン鉄道がもたらした莫大な経済効果を目の当たりにし、他の東南アジア諸国も静観していられなくなった。中国と諸国をつなぐ広大な鉄道網建設の機運が急速に高まり、タイ、カンボジア、ベトナムの鉄道建設担当高官が昨年には相次いで訪中した。昨年12月中旬、習近平国家主席はベトナムを訪問し、ベトナム共産党のグエン・フー・チョン書記長と会談。それを受けて中国とベトナムが発表した「包括的戦略的協力パートナーシップのさらなる深化と引き上げ、戦略的意義を有する中国・ベトナム運命共同体構築に関する共同声明」は、両国間の標準軌鉄道の接続を促進し、中国雲南省と広西チワン(壮)族自治区をつなぐ2本の鉄道の建設に関する調査の実施に合意した。

 

   この動きの先には、中国と東南アジア諸国が複数の鉄道で結ばれ、密接不可分な経済圏が形成されていく未来像が見える。かつてEUは、資源の共有と密接な交通網で一つの共同体を形成したが、中国と東南アジア諸国が一体化した交通ネットワークをベースに共同富裕を実現するのも、決して夢ではないだろう。 



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