東日本大震災後、日本の貿易収支は赤字に転じ始めた。海外直接投資収益が徐々に、日本の最大の収益源になった。これは日本経済の構造に重大な変化が生じており、かつての「貿易立国」から密かに「投資立国」に転じていることを示している。
過去を振り返ると、日本企業もしくは資本の海外進出は日米貿易摩擦の激化による受動的な行為だったが、これは日本企業に次の大きなメリットをもたらした。(1)米国からの貿易の圧力を効果的に相殺した。(2)国内の効果的な需要の不足という日本企業の難題を解消した。1995年だけでも、日本が海外で新設した企業数は1000社を超えた。国際協力銀行(JBIC)の調査データによると、日本の製造業の海外での売上が占める割合は22年の段階で39%を超えた。(3)日本企業が経済グローバル化のボーナスをより多く享受できるようになった。経済産業省の調査によると、日本企業の海外法人数は22年で2万4400社に、世界各地での従業員雇用は557万人にのぼり、日本の製造業全体の海外生産の割合が27%を超えた。(4)海外進出はすでに日本企業の技術イノベーションの重要な源泉、国際的な競争力を構築する重要な基盤になった。
しかし日本企業の大規模な海外進出は客観的に見て、日本経済の長期低迷の現れであり、その原因の一つであることを否定できない。
まず、大量の資本が海外に転じることで、日本国内の資本の蓄積が大幅に遅れ、投資けん引の経済スピルオーバー効果が大打撃を受けた。第二次大戦後、高度経済成長期も石油危機後の安定成長期も、投資けん引は常に日本の経済成長の重要な原動力だった。しかし大量の資本が海外に向かい、日本国内の資本の蓄積が遅れた。
次に、海外進出は輸出増をけん引したが、この生産能力の移転は国内の産業空洞化を激化させた。
さらに、日本企業の海外収益の「還流の差」が、日本政府の新たな難題になっている。データによると、日本企業が海外子会社に留める利益は23年に10兆5000億円と、10年前の約3倍になった。これは円安進行を促した要素の一つでもある。日本政府はさらに「リパトリ減税」措置の検討を開始している。日本企業が海外子会社から戻す資金に適度な減税を行う。
最後に、国際情勢の動乱及び地政学的リスクの拡大に際し、対外直接投資のリスクも拡大している。ロシアとウクライナの衝突を例とすると、米国とEUが対露制裁を持続的に拡大する中、ロシアに投資する一部の西側グローバル企業が撤退を選択した。22年9月以降、トヨタ、日産、マツダなどの日本の自動車メーカーはロシア工場の閉鎖を発表した。うちトヨタと日産の損失は1000億円以上にのぼる。
(筆者=張玉来・南開大学世界近現代史研究センター教授、日本研究院副院長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年9月24日