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中国におけるシルバー経済の発展とその意義=小林正弘氏

中国網日本語版  |  2024-09-29

中国におけるシルバー経済の発展とその意義=小林正弘氏。本年1月には国務院より「シルバー経済の発展、高齢者福祉の増進に関する意見」が発表され、今回の三中全会で採択された決定でも高齢化問題に積極的に対応する施策としてシルバー経済の発展が強調された…

タグ:高齢化 シルバー経済 産業 雇用

発信時間:2024-09-29 17:06:03 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

文=小林正弘

清華大学法学博士 

Genuineways Law Firm パートナー

中国では高齢化社会の進行に伴いシルバー経済拡大の機運が高まっている。本年1月には国務院より「シルバー経済の発展、高齢者福祉の増進に関する意見」が発表され、今回の三中全会で採択された決定でも高齢化問題に積極的に対応する施策としてシルバー経済の発展が強調された。

シルバー経済とは高齢者向けに提供する商品・サービスおよび老後準備などの一連の経済活動の総和を指し、具体的には高齢者向けの食事、医療、介護、文化・スポーツなどの公共サービスや、高齢者向け用品、スマート養老、アンチエイジング、養老金融商品、健康補助器具、高齢者旅行サービス、バリアリーリフォーム等の潜在的産業の発展なども含まれる。

統計によると、2023年末の時点で、中国の60歳以上の高齢者人口はすでに2億9000万人に達し、総人口の21.1%(その内、65歳以上が15.4%)を占めており、2030年あたりには、65歳以上の人口が20%を超える超高齢化社会へ突入するとの予測がある。これに伴い、中国老齢科学研究センターの試算では、現時点で約7兆元(約140兆円)規模(GDP比率約6%)のシルバー経済は、2035年までに30兆元(600兆円)規模(GDP比率約10%)に拡大すると予測している。

中国では高齢者は家族と一緒に暮らし、孫の世話をしながら、老後の生活を送るケースが多く、老人を大切にする伝統などからも施設介護に抵抗があり、現在、9割以上の高齢者は在宅・社区(居住地域コミュニティ)介護の傾向がある。他方で大部分を占める夫婦共働きの家庭にとって高齢者の食事、健康管理、介護など負担が大きいだけではなく、高齢者自身の健康、文化、社交など多方面にわたりより質の高い生活を求めるニーズも高まっている。

このような背景のもと、喫緊の課題の一つが「高齢者の食事支援サービスの拡大」とされ、政府の資金援助の下、社区に住む高齢者に10元前後(約200円)でバランスのとれた食事を提供する老人食堂の建設・拡充が進められている。老人食堂は高齢者の健康・栄養管理を支えると同時に、友達を作り、交流を楽しむ憩いの場ともなっている。デリバリー業者と提携し、体の不自由な高齢者向けに食事の宅配サービスを提供するなど様々な工夫がなされている。

人は誰しも老いる。いかに老い、いかに人生の幕を閉じるか。シルバー経済の裾野は広く、その意義は経済効果に限られない。高齢者問題やニーズに対応する積極的な取り組みが、高齢者に生きる希望と活力をもたらすだけでなく、その家族の負担軽減ならびに新たな産業・雇用の創出に繋がり、社会全体の活性化へと繋がっていく。本当に″豊かな社会″とは、老いても、人間らしく、楽しく、喜びにあふれ、創造的な人生を最後まで全うしていける社会といえよう。高齢者を尊ぶ伝統をもつ中国におけるシルバー経済の発展が″豊かな社会″建設の模範となることを願ってやまない。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年9月29日

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