文=小林正弘
清華大学法学博士
Genuineways Law Firm パートナー
3月7日、王毅外交部長は第14期全国人民代表大会(全人代)の記者会見にて「中国を発見し、親しむことがブ一ムになりつつある。多くの人々が、安全で、開放的で、現代的な中国を体験し、親しみやすく寛容でユ一モアのある中国人との出会いを重ねている。人々の実感は偏見を取り払う光となり、心と心の交流は壁を打ち破る力となる。世界各国の方々に、自らの目で真の中国を見て頂き、開かれた心で14億の中国人民の活力を感じて頂きたいと願う」(要旨)と述べた。
筆者も北京の日本人留学生や旅行者に中国の感想を聞いてみたところ、「中華料理が美味しく、毎日が幸せ」、「天安門広場が広すぎて衝撃をうけた」、「上海バンドの夜景や豫園の灯篭がとても綺麗で感動した」、「小さな子供を連れていたらみんなから優しくしてもらった」、「もっと中国各地を旅行したい」、「中国でたくさんの友人をつくりたい」、「SNSで中国の写真をシェアしたら周囲の友達や両親の中国に対する見方が変わった」など積極的反応が返ってきた。日本では「中国は怖い」というイメージがあるが、自分の目で見て、体験した中国は全く違っていたようだ。これは16年間、北京で生活する筆者の生活実感とも重なるものだ。公園で太極拳をする老人を横目に出勤する平和な日常を過ごしている。去年、初めて中国を訪問した私の知り合いも最初は緊張していたが、現地の文化を体験し人々と交流する中で理解が深まり、「是非、また中国を訪れたい」と語るのが常であった。
また中国留学の動機を聞いてみると、「中国は批判的な見方がされることが多いが、本当にそうなのかを知りたくて来た」というアメリカからの留学生もいた。情報を鵜呑みにするのではなく、自分の目で見て思考する探究心と行動力がとても頼もしく感じられた。
日本やアメリカなどから見える中国と、中国で実際に目にする中国の印象がなぜ大きく異なるのだろうか。中国に限らず宇宙、自然、生命などについても、顕微鏡的に見るのか、巨視的に見るのか、静的に捉えるのか、動的に捉えるのかなどアプローチの仕方によって、人間の目に映る様相は異なり、印象も変わってくる。著名な歴史家トインビー博士は、物事がありのままに認識されない場合として、一断片を恣意的に周囲の環境から切り離し、あたかも一個の独立した全体像であるかのように考える場合や事象を過去や未来から切り離し、固定した静態として捉える場合を挙げている。
5千年以上の歴史を持ち14億人の生命がダイナミックに躍動する巨大な中国に対して、顕微鏡的で静的な見方のみでは全体像が把握できず誤った固定観点に陥りやすい。認識なくして評価なし。中国で生活する日本人や観光客の実感がより多く日本へ伝えられ、より立体的な中国理解が進むことを切に期待したい。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年3月10日
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