16日に開催された上海市第14期人民代表大会常務委員会第7回会議で「上海市軌道交通管理条例(改正草案)」(修正稿)が審議され、地下鉄の車両内での飲食を禁止する規定が初めて修正稿に盛り込まれた。同条例が確定すれば、車両内での飲食が法律で明確に禁じられることになる。新華網が報じた。
車両内での飲食は、周囲の人に不快な思いをさせることが多いため、条例制定を期待する声が多く上がっている。ただ、車両内での飲食は日常化しているため、高齢の親と離れて暮らす子供に定期的に帰省することを義務付けることを盛り込んだ「高齢者人権益保障法」のように、実際には形骸化してしまうのではないかとも懸念されている。
中国では、「車両内での飲食」という行為はごく一部の人に見られる現象では決してない。同行為は大きく2つのケースに分けることができる。まず、マナー違反とは感じないか、マナー違反と分かっていても、取るになりない事と感じているという、観念の問題だ。これが、早朝のラッシュ時間帯に多くのサラリーマンが車両内で朝食を済ませる理由だ。もう一つは、実際に食べる必要がある乗客もいるという点だ。地下鉄の路線は現在、どんどん長くなっており、高齢者や子供、体の弱い人、病人、低血糖症などの人が長時間地下鉄に乗るとなると、車両内で何かを食べる必要が生じるのだ。
このような多数派や特殊な乗客に対して、一律「禁止令」を実施し、発見すると同時に罰則を科するとすれば、非常に大がかりな作業になると同時に、乗客の合理的な需要を無視することになる。また、明確な境界も定められない。例えば、病気の人は車両内でも飲食を許可するとしよう。では、どんな病気を患っている人ならいいのだろう。また、実際に取り締まる際に、どうやって病気の種類を判断するのだろう。そのほか、チョコレートやアメ、薬など、車両内を汚す可能性がなく、他の人を不快にさせる臭いを発さない食べ物なら許可するとしよう。では、その種の食べ物の境界をどのように定めるというのか。
取り締まりの基準以外に、誰が取り締まるのかという問題も、同条例の実際の執行のハードルを上げている。地下鉄会社は地下鉄を運営しているのであって、違法行為を取り締まる権限は有していない。理論的に言うと、地下鉄内で起きるどんな違法行為も、公安や工商行政管理局など、法律執行の権限を有している部門が取り締まるというのが筋だ。ただ、「車両内での飲食禁止」というのは、行為を規範化する法規で、取り締まるには大量の人員を投入しなければならない。一方、それ以外の部門が管理するというのも難しい。 車両内での飲食を禁じるという動きそのものには何の問題もなく、実際に多くの人の賛同も得ている。ただし、立法化するとなると、実際の執行に多くの問題を残している。そのため、道徳という側面から、マナー向上を提唱し、人々の観念を改善することにさらに力を入れるべきではないだろうか。そして、車両内では飲食をしてはならないという世論を構築し、人々の認識を高めなければならない。盲目的に立法化し、実際にはそれが形骸化してしまうのであれば、法律の威厳や権威を損なうだけだ。
「人民網日本語版」2013年9月26日