年間2000万人の外国人観光客が訪れる日本で、外国人が事件に巻き込まれたり、被害を受けたりするケースが目立っている。政府は「観光立国」を進めるが、被害者の救済や入国時の審査体制などの受け入れ体制が追いついていない――との声が聞こえる。
【外国人を狙うぼったくり】
「なぜ、お金を返してもらえないんですか・・・・」
東京の新宿・歌舞伎町の一角。中国人男性2人がおぼつかない日本語で警察官にこう訴えていた。
2人によると、「クラブに案内する」という男に前金と保証金で合計10万円を渡したところ、すぐに姿が見えなくなってしまったのだという。店に掛け合っても「金は受取っていない」との一点張り。警察からも「男を逮捕する方法がない」との返事しか返ってこなかった。2人にとって「日本のイメージはがた落ち」という。
2015年の夏頃から、歌舞伎町で外国人旅行客を狙った客引きやぼったくり事件が増え始めているが、ターゲットになっているはアジア人とアフリカ人。
客引きらは最初は英語で話しかけるが、通じないと中国語、さらに韓国語に切り替える。歌舞伎町で長年ぼったくり事件の防止に取り組んできた中村剛弁護士によると、「ほとんどの事件は組織的に行われている」という。
外国人観光客は事件の状況がわからず、日本での滞在期間も短いため、詐欺に遭ったとしても訴訟を起こすことができない。警察は「状況を詳しく調べたいと思っても、被害者(旅行客)はすぐに他の場所に行ってしまう。店も情報を提供しないため、何の役にも立たない」と話す。
【外国人観光客向けの安全保障が欠如】
「息子は死んだほうがましだ」。2015年9月末、警視庁本部でマレーシアの女性が涙にくれていた。2013年に日本に出張した長男が、歌舞伎町で中国人の男性に顔を殴られ、帰国後も意識不明の状態が続いているのだという。犯人は処罰を受けたものの、賠償金は支払われていない。
仮に被害者が日本人か定住外国人であった場合、賠償金の支払を国に申請することができる。しかし短期滞在の外国人はこれができない。彼女の息子は損害保険に入っておらず、手術代などにかかった1000万以上のお金は彼女の家庭にとって大きな負担だ。警察の担当者は「かわいそうだが、我々にはどうすることもできない」と話す。
国境を跨ぐ人が多くなるのに従い、被害を受けた外国人に対する救済制度は国際的な問題となっている。
2020年の東京オリンピックの前後には、訪日外国人観光客の数が大幅に増える。 常磐大学の諸澤英道・前学長は「日本には外国人観光客の日本での安全を保障したり危険回避を支援する制度が欠けている。現行の制度を早く改善しなければ、日本の『観光立国』の政策が国際社会の賛同を得ることはできないだろう」と指摘している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年6月2日