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口述録音で「グサル王伝」を救うチベット族研究者
発信時間: 2009-03-27 | チャイナネット

2009年1月のある午後、61歳のチベット族の学者、グサンイシ氏は西藏(チベット)古籍出版社の社長を辞任。だが、彼の生活は相変わらず多忙だ。「生涯、チベット文化の研究の仕事に携わってきたので、それを放棄することはできない。いつもまだ成し遂げていない仕事があると感じている」

グサンイシ氏と「チベット通史」

グサンイシ氏は高卒後に就職。職場から派遣されて中央民族大学で漢語とチベット語の翻訳を学ぶ。78年、中国社会科学院古典チベット語専攻の院生に。チベット初の院生4人のうちの1人だ。卒業後、チベット社会科学院での仕事を選んだ。

社会科学院に勤務後、チベット族の古典籍学分野の研究に傾注し、「チベット族文学史上の新たな一頁」や「チベット族文化の形式に関する試論」といった論文や翻訳論文を発表。さらに百万字にのぼるチベット語と漢語の専門書「チベット通史」など重要な書籍の編集、翻訳に参与した。

グサンイシ氏の編集したチベット語の書籍

チベット語の古書を整理するグサンイシ氏

チベット語の典籍を伝承するため、チベット自治区は80年代末に古籍出版社を設立。チベット語の古書や古代木簡、金石文字の整理・出版が主要な仕事だ。03年、グサンイシ氏は社長に就任。古代チベット語の研究と翻訳を継続する一方、様々な貴重な文献を求めて各地を奔走した。「出版社は『雪域文庫』の名で50種近い書籍を発行してきました。これらの価値は非常に高く、昔は写本や木版本であったため、広く伝わっていませんでした。国際チベット学界から非常に歓迎されており、米国の議会図書館が収蔵しているほか、日本や英国、ノルウェーも所有しています」

グサンイシ氏は、59年のチベット民主改革以来、国はチベット文化の保護を一貫して重視し、近年は、中国政府が投入資金を拡大したことで、チベット各地の名所旧跡や無形文化遺産は適切に維持、継承されていると語った。とくにチベットの著名な史詩「グサル王伝」に触れ、「『グサル』は旧チベットでは重視する人はおらず、それを整理する力もなかった。当時の教育は非常に遅れており、『グサル』を救う教育を受けた人もいなかったので、それは不可能なことだった」と説明する。

サンジュさんの口述による「グサル王伝」

「グサル王伝」は千年余の歴史を有する世界最長の史詩で、ずっと民間による口頭伝承が主体であったため、歴史上の文字記載については断片的なものしかない。グサンイシ氏が把握する状況によれば、すでに亡くなった人、健在の人も含め、口頭伝承者はチベット自治区では40数人しかいない。「グサル王伝」を救おうと、チベット社会科学院は70年代から口述録音を開始。「われわれは伝承する老人、サンジュさんを選んで、彼の口述を45巻からなる『グサル精選集』に整理しました。すでに30数巻を出版、3、4年後には完成する予定です」。グサンイシ氏にとって、「グサル王伝」選集が世に出るのは、チベット文化への功徳無限の素晴らしい出来事なのだ。

現在、中国のチベット学研究機関は50カ所を超えており、研究者はおよそ2000人、学術書は十数種にのぼる。グサンイシ氏は「われわれはここで成長し、チベットの変化をそのたびに経験してきた。チベット文化はいま、これまでになく発展、繁栄している」と強調した。

「チャイナネット」2009年3月27日

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