2006年に発表された白書「中国高齢者向け事業の発展」によると、全国の都市・農村部には社会福利院、敬老院、養老院、老年公寓、老年護理院といった高齢者向けサービス機関、すなわち老人ホームが3万9546カ所あり、総定員は149万7千人に上る。うち農村部の敬老院は2万9681カ所、総定員は89万5千人で、入居希望者のニーズをほとんど満たせていないのが現状だ。
ある調査によると、中国では60歳以上の老齢人口がすでに1億4400万人に達し、うち約5%の人が老人ホームへの入居を希望しているが、実際の入居率は0.86%にとどまっている。
「中国高齢者向け事業の発展『第11次五カ年計画』」によると、同期間(2006~10年)中、農村部では老人ホームの総定員を220万人分増やし、都市部では主に独居老人向けに総定員を80万人分増やす計画だ。だがこの目標が達成されても、300万人にしか対応できない。5%の入居希望者に対応するには、新たに計720万人分の定員増加が必要なのだ。
2006年2月に国務院弁公庁が関連部門に出した通知によると、国はさまざまな手段により高齢者向けサービス業の創業を積極的に支持するとともに、社会資本が独資・合資・合弁・共同経営・株式参加などの各種方式で高齢者サービス業を創業し、居住、生活、学習、娯楽、健康対策などの機能を兼ね備えた高齢者向けアパートや老人ホームを設立することを奨励するとしている。また社会資本が高齢者を対象とした生活補助サービス、家事代行サービス、心理相談、リハビリサービス、救急サービスなどの創業にも投資され、在宅高齢者にさまざまなサービスが提供されるよう奨励するとしている。
中国の現有の高齢者向けサービス施設は、その大部分が国や集団の投資で設立された公有制施設だが、現在は非公有制の施設が急速な勢いで発展しており、一部の地域ではすでに数の上で公有制施設を上回っている。
上海市には老人ホームが467カ所あり、うち非公有制施設が122カ所に上る。天津市では非公有制施設が231カ所、総定員が8939人に上り、市内全施設の総定員の85.5%を占める。1995年に設立された天津鶴童老年福利協会は、慈善事業や福祉サービスを行う民間コミュニティ組織で、天津市と北京市に老人ホームを設立している。同協会は、高齢者向けのレストランサービス、資産管理サービス、ショッピングサービスなどを提供し、ドイツの老人ホームの技術・管理手法を導入して高齢者介護の職業訓練学校を設立・運営しているほか、在宅高齢者向けの介護サービス会社も設立した。
広州市にある民間施設・広州寿星大厦は全国最大の高齢者向け福祉サービス機関だ。総投資額は2億元を超え、総床面積は11万平方メートルに達する。デイケア、宿泊、旅行手配、レジャー、医療、娯楽、飲食、保健などの各種サービスを提供する一体型老人ホームで、現在約2千人の高齢者がここで暮らしている。
写真(左):山東省臨沂市棗溝頭鎮の老人ホームで、新年を迎えるために散髪の順番待ちをする高齢者たち。
写真(右):天津鶴童老年福利協会で、海外から訪れた視察メンバーを囲む高齢者たち。
「人民網日本語版」2007年1月23日