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拉薩「3・14」事件、ある米国人の体験談
発信時間: 2008-03-26 | チャイナネット

「私は恐怖と驚きを覚えました」――。拉薩(ラサ)市で起きた暴行・破壊・略奪・放火の重大な暴力事件、「3・14」事件での体験を記者に話す時、米国人のトニー・グリーソンさん(中国名「顧依松」、Tony Gleason)の目には不安と困惑の表情が浮かぶ。

トニーさん(39)は米「チベット貧困解消基金(Tibet Poverty Alleviation Fund)」の主任。アーサー・ホロコム会長の下、西蔵(チベット)自治区の各級貧困扶助弁公室と協力し、地元農牧民に少額融資や職業訓練・起業知識を提供している。西蔵に来る前は、黒竜江省、広東省、安徽省で貧困扶助活動を行った。西蔵に着くとすぐ、拉薩の澄んだ和やかな雰囲気、素朴で敬虔な住民に魅せられ、あっという間に3年間が過ぎた。

だがトニーさんの目に映った3月14日の拉薩は、もはや良く知るあの「陽光の都」ではなかった。同日午後1時頃、トニーさん夫婦と1歳になる娘、そしてホロコム会長は大昭寺(ジョカン)近くの雪域レストランで食事を取っていた。すると突然、表門を施錠すると言われ、トニーさんが窓から外を見ると、路上には慌てた様子で散り散りに逃げる人の姿が見えた。娘を抱いて裏門から出たトニーさん夫婦は、大通りに差しかかったところで、少なからぬ人々が棒を振り回し、声高に叫んでいるのを見た。ファスト・フード店に投石している人もいる。夫婦は自転車で宿泊先のホテルに引き返すことにした。

その後の半時間に経験した恐怖を、トニーさんは生涯忘れることができない。北京路を自転車で走ると、行き交う車両に暴徒らが投石している最中だった。商店のシャッターを棒で叩き壊す者もおり、路上には店の商品が散乱していた。

トニーさんは「拉薩はいつもはとてもきちんとしている町です。暴徒らがあれほど多くの石を持っていたのは、早くから準備していたのかもしれません」と語る。トニーさんは娘を連れて隔離帯の外を、妻は隔離帯の中を自転車で走った。娘を後部座席に乗せていたため、夫婦は混乱の中、たいへんな恐怖を覚えた。トニーさんの妻は途中で止められもしたが、幸い夫婦に絡んでくる人はいなかった。午後1時半、トニーさん夫婦はようやくホテルに着くことができた。この時すでに市中心部が黒煙に包まれていたのをトニーさんは覚えている。

ようやく一息ついた夫婦は、まさかさらに恐ろしい事が待ち受けているとは思いもしなかった。午後5時頃、すでに施錠されたホテルの鉄製の門を、暴徒らが木槌や石で叩いている音をトニーさんは耳にした。叫び声も絶えず聞こえてくる。後に通訳してもらったところによると、暴徒の群がホテルに突入し、隠れている1人を差し出すようホテル側に求めたのだが、幸いホテル内の人に制止されたのだという。

トニーさん夫婦はその後数日間をホテルで過ごした。ホテル周辺も平穏ではなく、よく行くレストランも打ち壊されたと聞く。トニーさんの妻と娘は20日までにシカゴに帰り、ホロコム会長も拉薩での仕事を予定より早く切り上げてサンフランシスコに帰った。

現在、拉薩市はすでに以前の落ち着きと平静を取り戻し、トニーさんも多忙な貧困扶助活動を再開した。トニーさんによると、ホロコム会長は今回、西蔵各地の貧困扶助弁公室と協力の打ち合わせをし、西蔵における基金の活動を改善するために訪れたのだが、このような事が起きてしまったため、これがいつ実現するかはわからなくなった。

この間、トニーさんも拉薩「3・14」事件に対する外の世界の反応を、インターネットで把握していた。トニーさんは「ネット上の多くの報道は、いずれも外部の目から事件を受け止め、論評しているものだ。その実作者は、当時拉薩で一体どんな事が起きていたのかを理解していやいない。このため、一部メディアの論調や報道は、事実そのものから相当かけ離れたものになっている」と指摘する。

「私はこの町と、ここで暮らす人々が本当に好きです」とトニーさんは言う。過ぎ去ったばかりの暴力事件に恐怖を覚えもしたが、トニーさんは妻と娘が早く戻ってくること、そして西蔵での仕事が順調に進むことを期待している。

「人民網日本語版」2008年3月25日

 

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