フィリピン・マニラのバスジャック事件から1年が経った23日、遺族と生存者は現地の追悼式典に参加した。フィリピンのアキノ(3世)大統領は再び謝罪を拒否、1年前の事件は「正常ではない犯人」が起こしたもので、フィリピンが事件の責任を負う必要はないとコメントした。大統領はまた、先月ノルウェーで起こった乱射事件を例に挙げ、いずれの事件も防ぐことは不可能だったと話した。遺族と生存者は、大統領のコメントを「傷口に塩を塗るようなもの」と批判、激しい怒りを示した。香港・明報が伝えた。
香港特別行政区の曾蔭権(ドナルド・ツァン)長官は、SNSサイトの「香港特区行政長官弁公室」のページに文章を寄せ、「事件から1年が過ぎ去ったが、香港市民が時間の経過と共に事件のことを忘れることはなかった。負傷者が一日も早く回復し、遺族と生存者が悶々とした霧中から抜け出し、晴々した気持ちを取り戻す日を迎えるよう祈っている」とコメントした。
アキノ大統領は23日、リサール公園での追悼式典には出席しなかったが、会場からほんの数百メートル離れたマニラ湾で行われた海軍新艦到着式典に出席した。遺族は、追悼式典が行われている最中に、海軍式典で鳴らされた祝賀の爆竹の音を耳にした。アキノ大統領は「人質事件は、ひとりの『正常ではない犯人』によって引き起こされた。陳謝とは、フィリピンという国が生存者と遺族に極めて大きな苦しみをもたらしたことを認めるという意味だ」と指摘、国として謝罪することに同意しなかった。また、「フィリピンの国民が異国で被害に遭うことがあっても、フィリピン人がその国の国民全員をとがめることはありえない」と話した。
大統領はさらに、「事件は極めて突発的な性質を帯びていた。犯人のメンドサの態度はめまぐるしく変わった。フィリピン政府の過失ではない」と改めて言明した上で、政府がこれを機に突発事件に対する警察の危機対応力を強化したことをアピールした。
▽生存者「正義が正当に扱われていない」
アキノ大統領が再び公然と謝罪を拒否したことについて、どの遺族も激しい怒りを表している。生存者の一人である李奕彪さんは「謝罪という最低限のことさえ拒む国が、賠償協議に応じるはずはない」と語った。李さんは、1年前の事件に関するニュースが今も話題になっているのは、「正義が正当に扱われていない」理由によるもので、「陳謝は最低限すべきこと」と強調している。
事件の犠牲になった謝廷駿さんの遺族も、アキノ大統領が謝罪を拒絶したことに怒りを示した。謝さんの兄・謝志堅さんは、あまりにも酷いと嘆く。遺族と生存者は、追悼式典後に4人の人権専門弁護士と会い、今後の民事・刑事訴訟について具体的に話し合った。また、23日午後には、フィリピンの国家議員と面会した。
「人民網日本語版」2011年8月25日