たとえば、アテネオリンピック(2004年)では、中国チームが出場するほぼすべての試合で、大会ボランティアが規定に違反する横断幕を携える中国応援団の行為を制止していた。仕舞いには、ただ「加油中国(中国ガンバレ)」と書かれた横断幕までが押収されるようになった。ボランティアは、「ここに何が書いてあるのか分かりません。しかし、中国人観衆は横断幕を掲げるのがあまりにも好きなので、漢字で書かれた横断幕を見れば、全てを制止するしかないのです」と説明した。
もうひとつの例。国家体育場「鳥の巣」で以前開催されたオリンピックテストマッチ「好運(グッドラック)北京」陸上競技試合で、劉翔選手をお目当てに来場した大部分の観衆から、出場選手紹介時にその他選手への拍手はほぼ皆無だった。劉翔選手が競技場から姿を消すと、試合はまだ終了していないのに、ほとんどの観客が帰ってしまった。
北京オリンピック三大理念のうち、「人文(ヒューマニズム)五輪」の実現が最も難しいと多くの人が考えている。しかし、「人文五輪」の実現は、オリンピックが成功するか否かを最も良く表す重要な指標となる。
「人文五輪」について、著名な学者である季羨林氏は、「素晴らしい中国文化の紹介?普及、同時に優れた海外文化の吸収」と解釈する。素晴らしい中国文化を紹介・普及することは、世界に「中国の故事」を広める機会であり、世界中の人々が5千年にわたる輝かしい中国文化の壮大な魅力を実感するチャンスとなる。中国文化は本来、開放的な精神を内包しており、北京オリンピックの開催は、中華民族にとって精神的洗礼の機会となり、中国人は、オリンピックを契機として、「平和・友情・進歩」を追及し、「より速く、より高く、より強く」の魅力を体感することとなった。
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