(1)いかなる食品安全事故も未発生
北京市食品安全弁公室の張志寛主任(北京市工商局局長)は14日も普段と同様に、五輪食品安全指揮センターで陣頭指揮を執っていた。大スクリーン上には国家水泳センター「水立方」、オリンピック公園、北京への進入路などが、リアルタイムで途切れることなく表示される。張主任は「開幕から約1週間、選手も報道陣も、品数が豊富で味も非常に良いと選手村の食事を称賛している。モニタリングの結果、これまでのところいかなる食品安全事故も起きていない。これは五輪食品の安全確保が万全であることを示している」と述べた。
▽「問題食品」は徹底排除
張主任の机には、某省のある食品会社の製品に品質上の問題が見つかったことを示す報告書が置かれていた。張主任はそこに「このような品質の食品は、絶対に北京に入れてはならない!」と2行で決裁を書き込んだ。張主任は五輪準備期間に似たようなケースを多く処理してきた。国内企業だけでなく世界的に有名な多国籍大企業もあり、国産食品だけでなく外国産食品も多く含まれ、それらは1つの例外もなく北京から排除された。少し前にも北京市食品安全管理センターは、ある多国籍飲料企業が海外から輸入したミネラルウォーターが中国の税関を通り北京へ入る前に、基準値を上回る菌類を検出した。有名企業が輸入する外国製品であろうと、同様に排除するのだ。
「五輪食品はニーズが多様で、品目が非常に多く、サプライチェーンも長い。どうして万に1つの失敗もないと保証できるだろう?」。張主任は率直に語る。食品の生産チェーンの長さは、食品安全がダイナミックなプロセスであることを決定する。「リスクはゼロ」とは誰にも断言できない。したがって、市場へ流通する前の関門が特に重要となるのだ。
このため北京市は国内一の技術を誇る食品安全管理センターを設立し、数十種類の有毒物質、有害物質、化学物質を検査できるようにしたほか、厳格できめ細かくスピーディーな食品品質の追跡監視・トレーサビリティシステムを構築した。このシステムは食品がすでに生産され市場に入る直前の最終段階に置かれるが、しばしば企業の生産過程、さらには輸送、保管などの部分にまで遡って影響を及ぼすことができる。ひとたび市場前の検査で不合格になれば、直ちに市場からの撤退を余儀なくされ、生産過程での投資がすべて水泡に帰し、自らに損失が降りかかるからだ。厳しい参入検査によって各社の自己管理意識は大幅に高まった。06年後半に北京市食品弁公室が五輪食品供給企業への全方位的な監視を開始して以降、肉、家禽、卵、魚といった食品の品質は高まり続け、禁止物質の検出はゼロになった。
五輪食品の安全管理の各面について、張主任にはすでに成算がある。それでもまだ何が心配なのかと問うと、張局長は指を1本立ててみせた。五輪期間の北京はちょうど高温多湿の季節にあたり、1年で最も食中毒が発生する時期でもある。この季節には食品は3時間以内に食べるのがベストだ。選手や観光客が、購入した食品をすぐ食べずに高温下に放置した場合、天候不良や体調不良といった外的要因も加わって、胃腸不良を引き起こしやすい。これが最も心配なのだ。「こうしたケースの緊急体制も万全だが、やはり誰にも不調を起こさないでほしい」と、張主任は語った。
|