「日本僑報」によると、在北京日本大使館参事官、外務省国際報道官など歴任した中国通と言われる外交官の千葉明氏は、7月はじめに「日本人は誰も気付いていない在留中国人の実態」を刊行した。
「日本に一番多い中国人は、上海人ではなくて、旧満州の人」「中国人の在留資格で一番多いのは、配偶者ではなくて、永住者」「在留中国人の犯罪で一番多いのは、凶悪犯ではなく、軽微な犯罪」—こんな、日本の常識と少し違う事実を、公表したての統計資料から解き明かした本、「日本人は誰も気付いていない在留中国人の実態」が彩図社から出版された。
著者は、入国管理局登録管理官の千葉明氏。千葉氏は、中国語の入門書や手紙の書き方の教科書のほか、中国語での著作や中国の小説の翻訳も出版している、外務省きっての中国語の使い手で、現在は法務省に出向中である。ちょうど出向したときに、在留外国人の最大勢力が、韓国・朝鮮人から中国人にバトンタッチしたこともあり、千葉氏は出向期間中、変化する在留中国人の実態を追い、改正されたばかりの入管法の解説も織り交ぜつつ、その成果を公表することとしたのだ。
千葉氏の観察は、出身地や在留資格別の動態にとどまらず、年齢層でいうと一番多い割合を占めるのが中国の新人類「八〇後」であることや、反対に学齢期の中国人子弟の割合は外国人全体の学齢期子弟の平均値にも及ばないこと等、多彩な角度に及んでいる。また、統計数字だけではなく、在留中国人関係の映画や、華僑紙に掲載された在留中国人のナマの声も拾い、具体的に分かりやすく紹介している。
その上で、千葉氏は中国人の受け入れ方を論じ、「嫉妬の念にとらわれてはならない」「量的な発想を捨て、質的な面に目をくけるべきだ」「国益を一致させるよう努力し、その最大化ではなく極大化を目指すべきだ」等と提言する。また、在留中国人に対しても、「郷にいっては郷に従え」と注文するのを忘れない。
同書は、外交官としての経験に加え、北京での合気道普及活動に従事してきた一人の個人としての立場からも考察を加えた、日中交流の具体的実践の記録でもある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年7月12日