第2に、米国は中国周辺国との利益の交わりを探すことで、地域の秩序に対する中国の影響力を弱めようとしている。中国は急速な経済成長によって周辺国に巨大な市場を提供したが、対外不干渉政策を遂行しているため安全保障を提供することはできない。この空白を埋めたのが米国の「アジア回帰」だ。中国の台頭に懸念を強めていた周辺の小国は、米国の回帰によって、中米間で二股戦略を遂行できる環境を手にした。アジア秩序の主導権を争う周辺の中・大国にとっても、米国の中国封じ込め戦略は要望に沿うものだ。米国はオーストラリアへの軍駐留など、中国周辺国との二国間同盟関係も強化している。さらに「米日豪安全保障対話」による「三国同盟」など、二国間同盟関係にある国々からなる新たな三者関係も構築している。
第3に、中国周辺は世界の大国の競争の場となっている。米国の「アジア回帰」戦略を主導に、世界の大国はいずれもアジア戦略の再構築に力を入れている。日本は「国の新たな位置づけ」を背景に、米日同盟(および将来のTPP)によってアジア秩序における衰勢から抜け出すとともに、アジア諸国と協力を強化することを望んでいる。大国として、こうした戦略の持続可能性は疑問だ。インドは「ルック・イースト戦略」を通じて、すでに東アジアの国になったと主張している。インドはASEANとの自由貿易協定締結に尽力したほか、2011年には日本と経済連携協定(EPA)を締結した。ロシアはまだアジア戦略を構築中だが、東アジアサミットを通じてすでに東アジアの問題に関わっている。「米国の太平洋の世紀」との戦略目標を前に、欧州は米国に後れをとる圧力を感じ始めている。債務危機の泥沼から抜け出し次第、欧州もアジアの問題に関わり始めるはずだ。域外であれ域内であれ、大国のアジア戦略の核はいずれも中国をめぐり展開されている。
要するに、南中国海問題をめぐる争いの背後には、大国のアジア戦略の指向が窺える。それは中国に周辺環境の複雑化と、全く新たな試練の到来を告げている。中国は新たな戦略理念をもって、こうした変化と試練に対処する必要がある。
「人民網日本語版」2012年1月5日