2003年ぶりに訪ロした日本の首相である安倍晋三氏は2013年4月、ロシアのプーチン大統領とモスクワで会談を開いた。両首脳はその後、平和条約を締結するため積極的に接触し、双方が受け入れられる案を模索するよう、自国の外相に指示した。プーチン大統領は記者会見で、対話の再開は「この問題が明日になれば解決されることを意味しない」と強調した。安倍首相は、両国の立場は依然としてかけ離れていると述べた。
3年が経過したが、「この問題」には解決の兆し、もしくは解決に近づく兆しがまったく見られない。双方が検討していたプーチン大統領の訪日も実現されなかった。安倍首相はこれを受け、プーチン大統領と会談するため再度訪ロすることを決定した。場所はモスクワから遠く離れたスキーの名所、ソチだ。安倍首相は2014年、欧米主要国首脳が欠席するなか、ソチを訪れプーチン大統領と顔を合わせた。安倍首相はこれで、再任してから1年余りのうちに、プーチン大統領と5回目の会談を実現した。
安倍首相による今年5月6日の訪ロは、ウクライナ危機によるロシア・欧米関係の改善の遅れを背景としている。報道によると、米国が不快感を示しているが、安倍首相は訪ロの方針を固めている。日本経済新聞によると、これは「日ロ関係の突破口を見出そうとする首相の決意」を示しているという。
いわゆる「突破口」は2つある。まずは両国の四島に関する係争、それから懸案となっている平和条約交渉だ。この2つの問題は、第二次大戦で結ばれている。終戦前、旧ソ連は北方四島を奪い、占拠を続けている。日本は冷戦時代に四島返還を求めたが、旧ソ連はポツダム宣言に基づき領土問題は解決済みとした。双方は1956年、日ソ共同宣言を発表した。旧ソ連は平和友好条約締結後、四島中の歯舞群島と色丹島を返還することに同意した。しかしその後、米ソによる冷戦が激化したことで、旧ソ連は条件を追加した。外国軍が日本から撤退し、日ソ平和友好条約を締結した場合に、上述した約束を実現するとしたのだ。日本は四島同時返還を主張しており、問題がこじれている。
国内外の政治環境の変化により、日ロは近年互いに歩み寄りを示しているが、全体的に見るとロシアが強硬で日本が弱い立場となっている。日本側は「分割案」により、歯舞・色丹を手にするチャンスがあったが、このチャンスを逃してしまった。安倍首相は今回、再び積極的に訪ロし、問題解決を促そうとしているが、日本では悲観視されている。
話し合いがまとまることはないと知りながら、双方は交渉に意欲を示している。ロシアは安倍首相の訪ロが、膠着するロシアと西側の関係を和らげることに期待している。次に日本の財政・経済的実力が、ロシアの低迷する経済に利益をもたらすことに期待している。安倍首相の考えは複雑だ。政権運営の基盤を固めている安倍首相は、外交によって手柄をたてようとしており、対ロ関係が重要な選択肢となっている。日ロ関係が改善されれば、日本は周辺諸国との駆け引きの余地を残すことができる。ロシアが外交と経済で行き詰まり、安倍首相は得難いチャンスだと考えている。さらに安倍首相は、日ロ関係の突破により、隣国・地域・世界の外交を活性化させようとしているかもしれない。安倍首相は今回の訪ロで成果を手にするのは難しいことをよく知っているが、実質的な成果がなかったとしても、大きな負担になることはない。
対ロ外交において、安倍首相は外交の「柔術」を十分に示している。領土問題の解決策は、どちらか一方が主権を放棄する、双方が領土を分割する、主権を棚上げにし共同開発・共同管理するといった数種類しかない。現在の立場を見ると、ロシアは平和条約の締結を前提に、一部島嶼の返還を貫きながら、日本に対して経済・外交の全面的な支持を求めている。野心あふれる安倍首相にとって、一部返還は選択肢に含まれない。外交・経済支援も、現在の日本の実力では厳しい。そのため安倍首相がどれほど柔軟な姿勢を示しても、今回の訪問は象徴的な意味合いが強い。島の係争と平和条約の締結には、まだ条件が備わっていないというべきだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年5月3日