格付け会社フィッチ・レーティングスは6日、香港の信用格付を「AAプラス」から「AA」に引き下げ、見通しを「安定」から「ネガティブ」にした。香港特区の林鄭月娥行政長官は同日、フィッチによる格下げの決定に同意しないと表明した。「東方の珠」の経済の粘り強さは、国際金融センターの地位を守り抜くことができるだろうか。
格下げ後、一部香港メディアは「香港を狙い撃ちにしたパーフェクトストームが徐々に形成されている」と論じたが、専門家から直ちに否定された。あるメディアは7日、復旦大学泛海国際金融学院の鉄軍院長の研究を引用し、「格付け機関は信用格付けの際に、その国もしくは地域の経済状況の非公開情報を得ることも、比較可能な公式情報(国家間の資料は、入手と開示では大きな差が生じる)を得ることもできない。そのため信用格付けは、債券格付や構造化商品格付けほど厳格なものではなく、合理性で最も劣る可能性がある」と報じた。
一部メディアは「パーフェクトストーム」と騒ぎ立てているが、これは1997年のアジア通貨危機を想起させる。香港金融管理局の陳徳霖総裁は当時の「金融の殺し合い」について、「我々が表に出て、敵が裏に潜んでいた」と振り返った。「香港には潜在的な経済問題がある。まず、巨大な不動産バブルだ。次に、各世帯の高い負債比率だ。それから企業、特に不動産開発会社が過度に借金に依存している。さらに、香港の貿易赤字の対GDP比は3%にのぼり、輸入消費が輸出を上回っている。これは経済の過熱を示している。さらに香港ドル金融市場の規模は大きくも小さくもなく、流動性が高く、資金が自由に出入りできる。そのため香港は世界の投機家から目をつけられている」
香港が現在演じている金融の役割は、1997年の当時と異なっている。陳氏は「中国大陸部の改革開放が始まってから、香港は常に中国進出を目指す外資に選ばれる飛び板だった。データの統計開始後、外資の中国大陸部進出の最大の出処は香港で、半分以上の割合を占めることが多かった」と指摘した。香港の飛び板という役割には過去10年で変化が生じた。以前は単一的な「外から内へ」という機能だったが、現在は「内から外へ」を兼任している。大陸部の対外直接投資のうち、香港が占める割合も6割以上にのぼる。これは香港が大陸部マネーの海外進出の飛び板であることを反映している。
陳氏は今後の協力について、「既存の政策空間を活用し、かつ大陸部・香港の制度の差を十分に考慮し、金融安定を堅持した上で、大陸部の関連部門と積極的に連携し、新たな協力分野の開拓を絶えず試みる。我々は一帯一路の投資と人民元国際化が好循環を生み出し、共に前進すると予想している。中国の対外投資と貿易が増加し、人民元がより頻繁に使用されているからだ。一帯一路の推進は、沿線諸国に大きなインフラ投融資活動をもたらす。その間、人民元がプロジェクトの融資・価格決定・取引通貨として使用される機会が増える。香港はオフショア人民元業務の中枢であり、国際市場の人民元取引に全面的かつ効果的な関連サービスを提供できる」と述べた。
また大陸部・香港の住民の生活、企業の事業展開の利便性を高めた上で、粤港澳大湾区は越境人民元流動の先発試行の条件を備える。陳氏は「我々は大陸部と適切な金融措置を検討中で、大湾区の発展をサポートする。人民元建て事業の発展に、より大きなスペースを提供できるはずだ」と述べた。
陳氏は環球時報の記者に「香港の金融・銀行体制は長年に渡り、衝撃緩和及び耐震の高い能力を構築した。短期的に見ると、香港の金融・銀行体制、通貨・株式市場は安定を維持し、秩序正しく運行している。ところが最近の香港の社会事件が、投資家から注目を集めている。香港の制度、法治の精神、市場の長所は長年の蓄積によって形成され、投資家の自信の拠り所にもなっている。自信は金融市場のスムーズな運行にとって極めて重要だ。香港の国際金融センターとしての地位は得難いものだ。我々は社会の対立が一日も早く適切に処理され、香港社会の秩序が早期正常化することを望んでいる。香港金融管理局は引き続き市場の状況を密接に観察し、香港ドル市場が引き続き連動為替制度に基づき効果的に運行することを保証し、香港の通貨・金融体制の安定を維持する」と話した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年9月9日