高原から海へ
瀾滄江─メコン川は、世界で6番目に大きな川である。中国、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムの6カ国を流れている。その経由地域は、国際的に大メコン川流域(GMS)と呼ばれる。現在、中国国内でこの地域に含まれるのは、雲南省と広西チワン族自治区である。
この川は、広く豊かな土地を育む雄大な川である。大メコン川流域の257万平方キロの土地に、3億2000万人、百以上の民族が暮らしている。
この地域の北側はヒマラヤ山脈の延長の高原、南側は広い平原である。瀾滄江─メコン川は、この地域を南北に貫いている。
瀾滄江─メコン川は、世界でもっとも高低差の大きな川の一つである。全流域の本流の高低差は、5167メートル。流域面積が百平方キロ以上の支流が、138本ある。源は、青海・チベット高原の雪山と湿原である。雲南省境内で横断山脈を縦断し、高山の深い峡谷の中を激流となって走り、その高低差が3000メートルに達することもある。それからシーサンパンナ(西双版納)のサトウキビ畑の中を緩やかに流れてゆく。やがて、ラオスの山地やミャンマーのシャン高原、タイ東北の台地に入ると、メコン川と呼ばれるようになる。
ここはアジアの熱帯地域で、気候は乾季と雨季に分かれ、稲や常緑のモンスーン雨林の成長に適している。ラオスとカンボジアの国境では、メコン川は突然数段の階段を流れ落ちて有名な「コーンの滝」を形作る。また、支流がトンレサップ湖につながる。トンレサップ湖はメコン川流域でもっとも大きな淡水湖で、メコン川の洪水を緩和している。ここから、アジア最大の穀物倉庫であるメコン川デルタに注ぎ込む。最後には、ベトナム南部で水かきを広げたようなたくさんの支流に分かれ、さらに広い海に流れ込む。
瀾滄江─メコン川のように豊かで複雑な川は世界のどこにもないという。水源から河口に至るまでに、砂漠以外の気候環境及びあらゆる地形をカバーしている。氷河のある寒帯、亜寒帯、温帯、亜熱帯および熱帯にある乾寒(乾燥していて寒い)、乾熱(乾燥していて暑い)、湿熱(湿度が高くて暑い)などさまざまな気候帯もそろっている。また、氷河、湿原、高原、高山・峡谷、中低山・広い谷、沖積平原などバラエティーに富んだ地勢を経由する。
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