歴史が薫る街並みを離れて、太古のカルスト地形の織り成す変化にとんだ海岸線を行くと新しい幾つかの顔が見えてきた。
大連は中国では3番目、東北部では最大の港で自動車産業の集約地点、というだけでなく、国際貿易港として環太平洋で釜山、横浜としのぎを削っている。また、最近、改革開放路線の目玉としての経済特区構想を実現している。
20世紀初めには、400隻ほどの船が出入りする小さな漁村だったが、今では毎年2万隻の大型船が利用する。100年で50倍にもなったわけだ。日本が一番の取引相手といわれる。
今年上半期で全体の取扱量は1.3億トン、通年では2.7億トンを目標にしている。
碁盤の目のように規則正しく並ぶ円柱形の石油タンク、オレンジや青の鉄道用コンテナが積み木細工のように並ぶ主要港の大窑湾から北よりの小窑湾に町をつくる大きな計画も進んでいる。14万平方キロメートルの広さに就業人口32万人、居住人口12万人というまったく新しい工業都市が生まれるというプロジェクト。190億元(2600億円)を投じて開発を進め、自由主義国のものとは少し違う点はあるものの、自由貿易区を発展させたいとしている。
日本に20回以上、商談などで来ているという大連経済技術開発区管理委員会の張世坤会長は「中国でははじめてのケースです。世界の自由貿易区を視察したが、シアトルのケースと似ているかもしれない。中国の場合はほかに天津、上海が続き、すべて沿岸沿いにある。ダボス会議には私も出席するが、各国の経済閣僚や世界のトップ500の企業が集まる。ビジネスチャンスとして大きい。ぜひこの開発の状況を見てほしい」と強い期待を寄せる。接してつくる自動車工業地帯はすべて国内企業が対象だが、できれば将来、トヨタに来て欲しい、と付け加えた。
「intel」の工場が近く稼動するし、ハイテク産業の誘致にも熱心だ。関係者は「シリコンバレーにしたい」と未来の顔をのぞかせる。
ハードな顔ばかりではない。ソフトな顔も見せる。日本人のゴルファーが多いのが大連のゴルフコース。起伏にとんだ海沿いのコースは風が強く面白い。イギリス・スコットランドのゴルフ場とよく似ている。小雨で曇る海を見ながら、コース内を可愛いキャディーさんの運転するカートで案内された。日本人や韓国人のゴルファーが優雅な休日を楽しんでいた。
ゴールデン・コーストと呼ばれる風光明媚な海水浴場、近くのリゾート地も完成度が高い。アジアに誇れるレベルだろう。
恐竜が海に頭を突っ込んだ、ように見えるとして名づけられたという恐竜岩。カルスト地形が長い間の侵食でできた「自然のいたずら」の産物。しかし、日本ではこの真ん中がくりぬかれた様な形の岩は珍しくもなく首を横にひねってみてもそうは見えなかった。育ったカルチャーの違いだろうか。
海辺のレストランでの夕食には茹でたシャコが出た。グロテスクな形に目を見張ったCRIの外国人記者。インド記者は沈黙を守り、ドイツ人の記者が一匹だけトライした。アメリカ人の女性記者は食べなかった。カルチャーの違いがいろいろな場面で見られるのも旅の醍醐味だ。(村田)
「中国国際放送局 日本語版」より 2009年9月6日