「CHINA+1」はまだ脇役
さて、日中貿易を左右する日本の対中投資(2006年)は、金額にして前年比29.6%減と大幅に落ち込みました。対中投資が一巡したなどの要因はあるものの、いよいよ「CHINA+1」の出現かと議論されたものでした。「CHINA+1」とは、中国の投資環境の変化や中国一極集中のリスク、ベトナムやインドなどの急成長によって、日本企業が中国以外の国・地域を投資先として選択しつつある、あるいは対中進出企業が中国から拠点の一部を移しつつある状況を指します。それが事実とすれば、日中貿易拡大への影響が避けられません。
「CHINA+1」のケース(注3)が出てきていることは否定できませんが、現時点では、最適地生産、最適地分業の流れに沿ったもので、「CHINA+1」が日中貿易全体に影響する状況ではありません。
むしろ、今後拡大が予想される日本の中小企業の海外展開の矛先が中国を向くか、あるいは中国が期待する省エネ、環境保護、サービス産業のアウトソーシングなどの分野での連携強化に日本企業がどのような対応をとるのかが、日本の今後の対中投資の趨勢を決める一大要因であり、同時に中国企業の対日展開を日本がどう受けていくのかなどが、日中貿易の今後に大きく関係しつつあるといえます。
今の米国市場に匹敵するほどの可能性を秘めた膨大な市場を有する中国は、投資先としても、貿易相手先としても、その魅力を減じることはないでしょう。日本の対中貿易は量的拡大を維持していくとみられますが、そのためには、中国企業は言うに及ばず、在中外資系企業と競合しつつ連携をも図るといった複眼的な視点が求められてくるでしょう。
注1 目下、中国は高級品・ブランドの売れ行きで世界第2位の市場となっている。また、中国には新社会階層(技術者、民営企業等経営者、自由業、外資系企業に働く管理・技術者など)が約5000万人いるとされ、こうした高所得者の消費が、輸入高級品の拡大につながる可能性がある。
注2 教育、娯楽・レジャー、福祉関連などのサービス業や女性、子供、ペット関連製品などの新興市場が拡大している。
注3 例えば、日本の家電大手は、重症急性呼吸器症候群(SARS)で新規中国事業を一時凍結、中国のみで生産していた製品の一部をタイで生産する予定。
「人民中国」より2007年7月25日