アジア対欧米
外貨準備の急増の主因は、貿易黒字と直接投資(注3)の拡大です。2005年は貿易黒字が1019億ドル、直接投資が603億ドルでしたから、同年の外貨準備の増加(2090億ドル)に大きく貢献したことがわかります。
【表】をみると、中国は米国とEUに対し黒字で、東南アジア諸国連合(ASEAN)や日本には赤字になっています。一概にはいえませんが、ASEANや日本からより多く輸入し、米国やEUにより多く輸出することで貿易黒字分の外貨準備が積み上がっているわけです。
現在、東アジアは世界の成長センターとして、世界経済の成長を牽引しているとまで言われています。この点、中国の市場開放が大きく貢献しているわけです(注4)。
中国は、1997年のアジア通貨危機では、人民元の切り下げが時間の問題と注目されましたが、「東アジア経済の安定のため」にとの理由で切り下げを踏み留まりました。当時、切り下げ回避の舞台裏には自国の事情もあったわけですが、元高傾向の今日、中国は外圧で人民元の切り上げはしないと明言しています。
また、外貨準備の急増には、中国の輸出全体の約6割を担っている外資系企業(注5)の存在も無視できません。2001年のWTO加盟から6年を経た2007年には、中国の市場開放はさらに進み、直接投資もM&Aの時代を迎えているなど、新たな展開を見せつつあります。中国の巨額な外貨準備の蓄積に、東アジア諸国・地域と中国に進出した外資系企業が貢献している状況はさらに深まっていくでしょう。巨額な外貨準備にかかわるリスクを背負っているのは、中国だけではないわけです。