5月に開幕した上海万博に行ってきた。平日の雨天にもかかわらず、9時の開園前から入場口にはすでに行列ができ、その盛況ぶりが伺えた。
ようやく念願叶って各国のパビリオンを回っていると、万博パスポートを手に、各館のスタンプを熱心に集めている人が多いのに気づいた。パビリオンに入るのに何時間も忍耐強く待ち、出口でまたスタンプを押すのに行列ができている。時には並ぶのが面倒なのか、館内には入らず出口でスタンプだけを押してもらう人もいる。どうやらスタンプ集めが流行っているようだ。せっかく万博に来たのだから何か記念を残したいという気持ちはわからなくもない。このスタンプを集める「万博パスポート」は一番人気のグッズだというから多くの人がこれにはまっているのだろう。値段は1冊30元。インターネットを通じて申し込めば、顔写真や生年月日を入れてもらえるということで、本物のパスポートさながらだ。
海外旅行へ行って自分のパスポートに出入国スタンプがたまると、なんだか嬉しくなるが、万博パスポートはその心理をよくついている。万博に参加する世界246の国と機関の記念スタンプを集めることで、あたかも世界各国を旅してきたような達成感を味わえるのかもしれない。
中国の人たちにとって海外旅行はすでに夢ではなくなった。日本でも観光地やホテルでは中国語表示がしてあり、中国語のできるスタッフがいたりする。それほど中国人観光客が日本にも押し寄せているということだ。いまや世界が消費力のある中国人観光客の受け入れに凌ぎを削っている。そのためか、各パビリオンは自国の魅力をたっぷり紹介する観光PRにも抜かりない。海外旅行がすでに現実味を帯びてきているという背景があって、万博パスポートに人気が集まっていると読み解くこともできなくない。
上海万博のキャッチフレーズは「不出国門、看世界」(国を出ずに世界を見よう)だが、上海万博はそれぞれの国がアイデアを絞って「よりよい都市、よりよい生活」というテーマを表現し、その国の文化や歴史、生活、自然などが来館者に伝わるようになっている。中国の人たちは展示だけでなく、万博に訪れた世界各国の観光客や各国のスタッフとのふれあいを通じて見聞を広め、世界の空気を肌で感じることができる。実際に、身振り手振りでスタッフに記念撮影を求める人の姿や楽器演奏に参加する人の姿、ダンスに飛び入り参加して人々の笑いを誘う人の姿を目にした。なかでも万博パスポートを介した交流(というほどのものではないが)は一番気軽にできるスタッフとの交流といえるかもしれない。スタンプをただ黙々と押していくアフリカのスタッフ、入り口でスタンプを押してもらおうとする来館客に対し「ダメ、ダメ、展示を見てからね」と笑顔で説教するブルネイのスタッフ、たまにはパスポートにではなく、来ているTシャツにスタンプを押してもらおうとするつわものもいて、スタッフの方がためらい、どっと笑いが起きていた。
万博会場で繰り広げられるこういった人と人との和やかな交流を眺めていると、これが世界への第一歩につながっていくような気がした。
(人民網日本語版記者 小月)