ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会もいよいよ終盤に近づいてきた。優勝国はまだ決まっていないが、国際サッカー連盟(FIFA)はもう手をたたいて勝利を祝うことができる。なぜなら、今大会で獲得した巨額の収益は彼らを十分に満足させるものだからだ。放映権料や企業の賛助金だけでも、30億ドルは超えると見られる。FIFAがこれまでで最も金を儲けたW杯である。
だが、この輝かしい経済数値のもう一方の面は、決してすばらしいものとはいえない。
開催国の南アフリカはW杯に計43億ドルを投じた。これは同国GDPの1.72%にあたり、W杯史上最高額である。6年前に南アフリカがW杯開催を申請をしたときに計画した費用の10倍だ。いま、南アフリカでは、W杯と巨額の資金を費やした一連の工事に疑問の声が上がっている。FIFAや企業は確かに儲けた。では、南アフリカは?
各方面の世論は「南アフリカはW杯によって経済成長を刺激している」と広く宣伝し、FIFAもW杯後の南アフリカの経済について飾り立てて吹聴しているが、実際のところ、南アフリカの人々は大きく失望している。失業率は依然として高止まり、経済成長もいまだ目立った好転はない。南アフリカの一部マスコミは、FIFAの行為は「新時代のサッカーによる植民統治であり、詐欺だ」と批判している。W杯期間に行われたストライキデモでも「ブラッター会長が黒幕だ」というプラカードが掲げられた。
ケープタウン北部のテーブルマウンテンの麓にあるグリーンポイントスタジアム。観客席6万5000席を擁するこのスタジアムの建設に45億600万ランド(約5億8000万ドル)を費やした。しかし実際はこんなにも巨額の資金を費やす必要はなく、既存のスタジアムに観客席を一層増やせば、準決勝戦の試合会場の要件を満たすことができたのである。7万人収容可能なダーバンスタジアムの建設費は3億8000万ドル。このスタジアムは外観がとても美しく、「宇宙人の手提げバッグ」と呼ばれている。だが実際にスタジアムに足を運ぶと、最も印象に残るのはその美しさではなく、周辺地域の貧しく立ち後れた生活だ。現代都市に必要な一切のものが、このスタジアムの周辺地域にはほとんどない。水道や電気、医療、住宅、学校、交通、下水道……。この一切のものとスタジアム建設のあの恐ろしい支出超過が一緒にされたと考えると、南アフリカのマスコミが憤るのも無理もない。
別の統計によると、6月前半に南アフリカを訪れた国外の観光客数は約45万6000人にのぼったが、同国が期待していた100万人には遠く及ばなかった。交通事情や治安を心配する声が多く、あふれ出るほどのサッカーファンをまだ迎えていない。観光業の「豊作期」は大会後に期待するほかないのかも知れない。しかし大会後は、「ポストW杯効果」を期待する前に、「10のサッカースタジアムをどのように経営していくか」というW杯が残す大きな難題に直面する可能性もある。グリーンポイントスタジアムを例に挙げると、この豪華なスタジアムもW杯後は間違いなく半遊休状態になるだろう。ケープタウンのサッカーチームの観客動員数はたった数千人だからだ。専門家たちは、W杯の後、グリーンポイントスタジアムの経営維持はまた大きな債務となり、年間の赤字は1000万ランド以上に達すると懸念している。
巨額の資金を費やしたにもかかわらず、その収益は未知数。W杯は南アフリカにこのような経済面の難題をもたらした。後日、ゆっくりと解決していくしかない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2010年7月9日