人民元と日本円との直接交換の実現は、第一に両国企業にとって福音だ。日本貿易振興機構(ジェトロ)がまとめた統計によると、2011年の中日貿易額は3450億ドルで過去最高を記録し、中国は3年連続で日本にとって1番目の貿易パートナー国となり、日本は中国にとって4番目の貿易パートナー国となった。だが中日間の膨大な貿易取引は、現在は基本的に米ドルを媒介通貨として決済されているため、両国企業の取引決済コストが増大するばかりでなく、苦心して手に入れた利益がコントロール不可能な米ドルの為替リスクの下にさらされることを余儀なくされている。
アジア開発銀行研究院が提供したデータによると、11年に人民元建て決済によって行われた中国の対日輸出は輸出全体の0.3%を占め、同対日輸入は輸入全体の1.7%を占めた。日本円建て決済によって行われた中日貿易の割合はやや高いが、09年の中国の対日輸出をみても18%にとどまっている。
同研究院のケイ予青エコノミスト(博士)は取材に応える中で次のように指摘した。中国と日本は世界2位と3位の経済体であり、中日間の貿易量はアジアだけでなく世界の貿易に大きな影響を与える重要な位置づけにある。それにもかかわらず両国はこれまでずっと第三の通貨を利用して貿易決済を行ってきたし、現在は米ドルの不安定性が増大している。こうした事実はそれほど正常な現象とはいえない。中日の通貨の直接交換が実現すれば、企業の取引コストや為替リスクが軽減されるだけでなく、人民元を受け入れ、使用し、保有することへの日本企業の意欲が一層高まることになる。