一部の専門家は、「米ドルとユーロは現在までに為替操作の競争を実施したことはない。米国は2008年の金融危機以降、量的緩和に取り組んできた。しかし米ドルは常にリスク回避の通貨とされており、大幅なドル安は生じていないため、金融戦争は存在しない」と指摘した。金融戦争の厳格な定義に基づけば、専門家の発言は一理ある。しかし理論は現実を離れることはできない。定義ばかりを論じても、人々の金融戦争に対する現実的な懸念を払拭できないのだ。
欧米諸国は印刷機を稼働させる際、常にそのタイミングを慎重に見計らっている。現時点では為替操作の競争は生じていないが、今後も生じないとは限らない。今後数年内、紙幣印刷のタイミングと規模が、常に「無制限」となる可能性がある。米国の上限なき量的緩和および債務上限引き上げ、欧州の「すべての代価を惜しまずユーロを守る」という姿勢、日本政府の関係者による円安が長期間継続されるという暗示は、「為替操作の競争」に対して薪をくべている。
G7とG20は前後して、為替操作の競争に反対する声明を発表した。これはつまり、通貨問題が現在すでに、世界経済の重大な脅威になっているということだ。ただし、先進国の金融政策は財政による制限を受けている。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、金融戦争の沈静化を図っているが、これもまたやむなき措置である。