第一に、東京五輪の開催時には、五輪をめぐる富の動きが底を打った状態にある。五輪による利益のこれまでの「成績表」をみてみると、収支をプラスにするのに初めて成功したのは1984年の米国・ロサンゼルス五輪で、10億ドル近い利益を上げた。88年の韓国・ソウル五輪、92年のスペイン・バルセロナ五輪、96年の米・アトランタ五輪も黒字を維持した。だが00年のオーストラリア・シドニー五輪と04年のギリシャ・アテネ五輪は巨額の赤字を出し、08年の北京五輪ではやや黒字になったものの、12年のロンドン五輪は10億ポンド(約1576億円)の赤字だった。投資がますます増え、観客はますます減り、最近の五輪は「五輪で稼ぐ時代」は終わったことをはっきりと教えてくれる。
第二に、東京五輪の招致申請の前期段階に投入した金額は予算をはるかに上回り、後期段階の建設投資も巨額に上る。このたびの申請計画と予算をみると、政府からの投資は約3300億円で、ほかからの投資を合わせると、少なく見積もっても東京五輪には最終的に4500億円が投入されることになる見込みだ。申請だけでもすでに500億円から600億円を投入しており、これで総投資額の12%を占めている。これから7年間におよぶ建設期間や開催年の20年に、日本政府がどれくらいの資金を投じることになるのか、今はっきりとわかる人はいない。会場建設を例に取れば、米国政府が94年のロス五輪のために建て替えたメーン会場は数カ所だが、東京五輪では30カ所を新たに建設するという。