第二に、国際金融危機という大きな背景や各国の危機対応策の波及効果の積み重ねが、越境M&Aに有利な環境を生み出している。これには安価な資金調達コストやM&Aのターゲット企業の価格交渉力の低さが含まれる。資金調達コストについていえば、史上まれにみる低金利の環境は長期にわたり資金の借り入れに苦しんできた発展途上国の企業にとって、資金を調達してM&Aに乗り出すチャンスをもたらしたといえる。年初以来、中国企業は世界でM&Aを活発に行ってきた。第1四半期(1-3月)に中国企業が関わった海外M&Aの規模は1千億ドル(約10兆9050億円)を超え、2015年全体の規模に迫った。価格交渉力をみると、金融危機の影響が続くことや日本をはじめとする各国の長期的な低迷により、こうした国々の企業の利益の見通しが弱まり、持続的な経営の力が殺がれ、革新発展への活力が押さえ込まれている。そこでますます多くの日本企業がその身を切り売りして、生き残りをはかるようになった。
第三に、買収された企業は大きな損失を出してはいるものの、それぞれの産業や分野においてなお大量の特許、コア技術、グローバル産業チェーン、グローバル営業販売ネットワークを有しており、ブランドには高い価値がある。そして中国企業にはこうしたものが欠けている。日本の企業、技術、製品が中国化を経て、中国の一般家庭に普及することが期待される。
![]() |
|
![]() |