5.TPPへの参加によって、国内改革をいやおうなく迫られることになる。日本経済の長期低迷の主な原因は、構造的矛盾によるものであった。とりわけ、農業、労働力市場、医療分野の問題が顕著化している。これらの分野の改革は、推進が非常に困難だ。特に、農業をいかにして新たな経済成長スポットに変えるかは、日本の構造改革における革新的課題になっている。農産物の関税の軽減・撤廃によって、海外の廉価な農作物が大量に日本市場に入りこむ。これは日本の農業が、海外の廉価な農作物とのし烈な競争を余儀なくされることを意味している。このような状況のもと、国内農業に改革のメスを入れなければ、将来に活路は見いだせない。明治維新や第二次大戦後の改革など、日本史上の重要な転換期はいずれも、『外圧』という刺激があったからこそ乗り越えることができた。TPPという新たな『外圧』によって、国内改革を推進することが日本に期待されている」
「だが、同時に、TPPが日本経済にもたらすものは、『福音』ばかりではない。まず、農産物が打撃を受けるであろう。TPPへの参加により、日本がある程度の打撃を受けることは避けられない。このため、農家の利益代表である『農協』は、TPP参加に激しく反対した。農産物関税の軽減・撤廃により、海外の廉価な農産物が日本市場に大挙して入ることになり、生産コストが高い国内農業が打撃を受けることは目に見えている。農家は自民党にとって選挙の際の『頼みの票』であり、その農家が打撃を受けると、自民党政権を支える基盤に脅威がもたらされる。次に、食品安全に関する問題がある。TPP発効後、大量の外国産農作物や食品が日本に入ってくるが、日本人はそれらの安全面での問題を非常に心配している」