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japanese.china.org.cn |22. 07. 2020

コロナ禍で、如何に危を機にしていくか?

タグ: サプライチェーン


 3.世界への理解と個性の主張


 周牧之:自動車も電気自動車になった途端に、デザイン性が要になった。デザイン性が時代を引っ張る。


 横山禎徳:自動車で言えば目に見えるボディのスタイルだけではない。昔からあるのは、ドアを閉めた時のボンという、安物感のない良い音がすることが一つのデザイン要素だった。音の良さが販売に影響した。1970年代になると、自動車のエンジンの音をデザインできるようになった。1960年代まではエンジン音も何故か各々国によって違っていて、イギリス、アメリカ、ドイツ車をエンジン音で分かることができた。それがいまはわからなくなった。特徴があるのはフェラーリーのクォーンという音くらい。


 最近出ているSUVのデザインの軸は、運転席のビューポイントの高さだ。視点の高さは自動車の性能とは関係がないが、視野が広く運転しやすいと感じるのか消費者がそれを選ぶ。目に見える部分と見えない部分の総合的なデザイン能力が問われるようになった。電気自動車がリチウム電池の進歩で現実的になったとき、電気モーターの自動車は内燃機関の自動車より部品も少なく簡単だからある意味誰でもできると思った時期がある。多くの中国の起業家も参入した。しかし、電気自動車はゴルフ場のカートよりはもっと複雑であった。テスラは、このデザイン問題をちゃんと見抜き、アメリカの自動車企業が落ち目になった時に自動車つくりの経験豊富なエンジニアを数多く採用したことが成功している理由の一つである。 


 周牧之:これからの製造業は相当変わる。感性があり文化的特徴があり個性やこだわりのある製品が出れば、もっと楽しい世界になる。


 横山禎徳:イタリア人は座るための家具を作るのが上手で、とても座り心地の良いソファを作る。長年積み重ねてきた歴史の厚みを簡単なひじ掛けイスやソファに感じる。例えばドイツ人がイタリア人よりいいソファを作ろうと思わなくていい。文化的な積み重ねが違うからだ。ドイツ人は別の意味で魅力的な家具を作ることができる。グローバリズムとは単調で一様な世界ではなくそういう多様なリージョナリズムの集合なのであり、豊かな世界になりうるのである。


 周牧之:私の家の椅子は、すべてイタリアの友人のマリオビリーニの作品だ(笑)。


 元は欧州の得意分野だったものだが、最近日本のメーカーが評判になるケースが増えてきた。例えば白ワイン、ウイスキー、チョコレートなどだ。日本の理工系女子学生の就職企業人気ランキングにも食品関連が多くなった。感性豊かな女性が入ることで、文化的感性的にさらに伸びていく。


 横山禎徳:日本はフランスより優れたワインをつくる努力をするのではなく、和食に合うワインを作ることが大事だという考え方がでてきた。最近の山梨や長野のワイナリーは実際、そのようなワイン作りを試行錯誤し、最近はなかなか優れた品質に達している。


 周牧之:友人の有賀雄二氏の勝沼醸造では、和食に合う素晴らしい白ワインを作っている。国際的にもさまざま受賞している。


 横山禎徳:和食は醤油をはじめとしてアミノ酸発酵食品が多く日本酒が合うが、ワインは乳酸発酵食品、例えばチーズなどに合うという常識がある。しかし、そのような常識を乗り越え始めた。そういうアナログな感覚が重要な分野では女性の精妙な感性と粘り強さは当然役に立つ。チョコレートも伝統的な世界を抜け出し多種多様な新しい展開を始めたようだ。


 キャベツのようなありふれたものも数百種類のバラエティがあり、日本食に最適な使い方もある。とんかつと一緒に出てくる生キャベツの千切りとか、広島風お好み焼きのキャベツとか、独特の種類が使われている。こういうリージョナルな展開もかえってキャベツの多様性と食のグローバルな発見や認知につながるかもしれない。このようにして各々の地域で得意なことをやって伸びればいい。そして、グローバルな展開との補完関係を見つけることになるだろう。


 周牧之:国際間で人の往来が猛烈に増えてきた。世界の国際観光客数は、30年前は4億人だったのに対して、2018年に14億人に膨らんだ。日本もこの流れで海外からの観光客が急激に増えてきた。これがコロナショックでパタリと止まった。


 横山禎徳:ツーリズムの世界は人の流動性が高いが、短期的であり外界の状況ですぐに増えたり減ったりする。ビジネスや、学問の世界の流動性はもっと安定的であって、傾向として今後も増加していく。今回の騒動がある程度鎮静化すれば、人の行き来は回復し増加軌道に乗るだろう。人数的に大きくないかもしれないが、アーティザン(職人)やプロフェッショナルの世界的移動は常に起こっている。職人やプロフェショナルの世界では伝統的にアプレンティスとしてキャリアをはじめ、その後ジャーニーマンになって幅広く経験し、マスターになる。レオナルド・ダビンチもジャーニーマンとしてヨーロッパを旅した。このジャーニーマンのステージのプロフェッショナルや研究者の移動が増えるだろうと私は思っている。建築家は世界を回って技を磨くというのが普通になっているといってもいい。今後は医療やハイテックの人材、そして、金融関係の人材がもっと流動的になっていくと思う。

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