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japanese.china.org.cn |02. 04. 2021 |
〈中国総合都市発展指標2019〉から見た中国都市化の新局面
明暁東 中国国家発展改革委員会発展戦略和計画司元一級巡視員、
中国駐日本国大使館元公使参事官
2016年末、〈中国都市総合発展指標〉(以下、〈指標〉)が発表されたことを受け、私は大変嬉しく思った。当時、私は在日中国大使館に勤務していた。東京経済大学の周牧之教授が同指標に取り掛かる段階から、私は同研究の方向性や指標の選定について非常に注目していた。というのも、私の中国国内における勤務先は、中国の新型都市化の戦略や計画を主管する部署であるからだ。具体的な指標を用いて都市発展を定量的に分析することは、中国の都市発展や都市化戦略を研究する上で、斬新なツールになると思い、私は周教授にメールで、〈指標〉が正式に発表されたことへの賞賛、そして〈指標〉が都市の総合評価における国際標準になることへの期待を伝えた。2018年春、中国に帰国する際、私は周教授に「〈指標〉の作成を継続し、毎年更新するようにしては如何か」と提案した。実は、周教授はすでにそのように進めていた。現在、〈指標〉の第1弾が公表されてから4年が経過し、〈指標〉の第4弾(2019年版)が正式に発行される運びとなった。
〈指標〉は、中国都市の発展に焦点を当てたもので、297都市を対象としている。これら都市は、中国のすべての地級市およびそれ以上の都市(日本の都道府県に相当)をカバーしている。〈指標〉は、環境、社会、経済の3つの軸から、27の小項目で191の評価指標を用いて、297都市の経済発展、社会進歩、環境改善を体系的に分析・評価している。これらの191の評価指標は、878の基礎データによって支えられている。〈指標〉では、膨大な情報量で中国の主要な開発戦略および新型都市化関連政策の実施状況や、都市発展における多くのメカニズムを発見し検証できる。最近、私は〈指標〉を注意深く研究し、多くの有益な発見を得られた。
1.データと現状
〈指標〉のデータを総合的に分析すると、近年の中国の都市発展におけるいくつかのシナリオが見えてくる。
図 2019年中国都市GDP、DID人口、製造業輻射力ランキング トップ30
(1) GDPランキング
4度の発表にわたりGDPランキングとDID(人口集中地区:Densely Inhabited District)ランキングのトップ30都市の構成は基本的に安定している。特にGDPトップ10都市は、上海、北京、深圳、広州、重慶、天津、蘇州、成都、武漢、杭州で、2016年から2019年に至るまで、年次によってわずかに順位が入れ替わるものの、10都市の顔ぶれ自体に変化はなかった。地理的な分布を見ると、これら10都市は、京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ、粤港澳大湾区(広東・香港・マカオ)、長江中上流地域に位置し、2019年のGDP総額は国家全体のGDP総額の23.2%を占める。これらは、世界経済との関わりの深い成長地域である。
GDPトップ11~30都市は、主に中心都市であり、その地理的な分布特徴も明らかである。例えば、鄭州と西安はそれぞれ中原と関中に位置する中心都市であり、済南、青島、煙台は山東半島メガロポリス、長沙は長江中游メガロポリス、大連は遼中南メガロポリス、福州と泉州は福建省沿岸部メガロポリス、長春はハルビン・長春メガロポリスの代表都市である。GDPで見ると、これらの都市は顕著な雁行型発展の構図を示している。
(2) DID人口ランキング
〈指標2019〉のDID人口ランキングからは、トップ30都市はGDPのトップ30都市と相似度が高く、異なるのは5都市のみである。人口の集積は経済の集積と高い相関関係があることが伺える。2017年と2019年のDID人口ランキングを比較すると、トップ30都市の顔ぶれは変わらないが、順位には変動がある。上海、北京、広州、深圳はトップ4を維持し、成都、南京、杭州、泉州、福州、鄭州、昆明、済南、長沙は順位を上げ、天津、瀋陽、西安、寧波、汕頭、合肥、青島、無錫、長春は順位を下げた。これらの変化は、東部のメガシティが引き続き強い集積能力を維持していることを示し、中部・西部地域から沿岸地域への人口移動が進み、中西部および東北地区では外部へ人口が流出すると同時に地域の中心都市にも人口が集積しつつある。
(3) 人口流動分析
〈指標〉の「人口流動」指標から、2019年における人口流入のトップ10都市は、上海、深圳、北京、東莞、広州、天津、佛山、蘇州、寧波、杭州で、人口流出のトップ10都市は、周口、重慶、畢節、富陽、信陽、朱馬店、南陽、商丘、遵義、茂名となっている。 2016年と2019年における人口流入都市と流出都市の規模・順位の変化を比較すると、中国の流動人口の規模が変化していることがわかる。流動人口のデータと照らし合わせると、以下のような人口移動の特徴が見えてくる。
まず、流動人口の規模が減少している。2016年から2019年にかけて、中国の流動人口の規模は、2016年の2億4,500万人から2019年の2億3,600万人へと、年々減少している。
2つ目は、都市間の流動人口の割合が増えたことである。人口流入・流出都市とDID人口ランキングの変化を総合的に分析すると、農村から都市へのパターンより、都市から都市への人口流動の割合が継続的に増加していることがわかる。2019年に県庁所在地や市区から流出した割合は45.1%で、前年より6ポイント増加し、急速な増加傾向を示している。
3つ目は、人口流動の方向が多様化していることである。中国における人口流動の一般的な傾向は、中西部地域・東北地域から東部沿岸地域へと向かうベクトルである。しかし、人口流動データを見ると、近年、中西部・東北地域における一部の中心都市ではDID人口が大きく増加しており、地域内の人口が中心都市へ集約していると同時に、中西部に人口が還流し始める兆しすら見える。