「まず乳液を塗って、肌に潤いを与え、それからコンシーラーとリキッドファンデを塗る」。これは希隆さんが授業前にするいつものメイクのプロセスだ。芸術系大学受験の予備校でパフォーマンス教員を務める希隆さんは、普段の仕事の中で「顔面偏差値」をキープする必要があるという。中国新聞社が伝えた。
美を愛するのは人の天性だが、化粧は見た目のためだけのものではない。希隆さんは、「ある程度言えることは、化粧というのは自分の職業を敬う気持ちの表れであり、また他人を尊重する気持ちの表れでもある。化粧を通じて自信を高めることもできる」と話す。
ここ数年、中国では男性の顔面偏差値をめぐる消費データが上昇を続けている。新経済(ニューエコノミー)産業の第三者データ調査分析機関の艾媒諮詢(iiMedia Research)がまとめた統計データを見ると、2020年の中国男性用スキンケア製品市場の規模は80億元(1元は約17.9円)に上り、21年は99億元に達する見込みで、美容・メイク分野の男性消費市場が今、中国で急速に拡大している。
ここからわかるのは、ますます多くの中国人男性が自分のイメージ管理に注意を払うようになり、美容やメイクに惜しみなくお金を使って、生活の質を向上させようとしていることだ。
吉林省長春市のスキンケア製品市場に足を運んで聞いてみたところ、ここ数年、フェイスマスクやBBクリーム、化粧水、口紅などの製品が男性に人気があり、売上げも目に見えて増加する傾向にあるという。
美容医療機関の責任者の説明では、これまで男性が日常生活の中で化粧をすると「男らしくない」のレッテルを貼られていたが、今はこういった昔からの偏見が徐々に打ち破られている。男性の化粧も整形ももはや珍しいことではなくなり、男性自身も「富と美貌」をともに追求するようになった。
国家二級心理カウンセラーの崔継紅さんは取材に対し、「社会の進歩と経済の発展に伴って、中国の都市建設、屋内外の装飾、環境の美化などに日進月歩の変化が生じ、美をめぐる心理も変化し、全体として美の標準が上がっている」と述べた。
崔さんは、「外見のために消費したいと考える中国の男性たちは、『内側も外側も美しくなること』、洗練された生活と人生を送ることを積極的に追い求めている」との見方を示した。
中国のライブコマース経済、EC経済の急速な発展も、男性の顔面偏差値消費に大きな利便性をもたらした。スマートフォンを開き、サイトをクリックすれば、商品の特徴を速やかに理解できるだけでなく、買った人の評価も見ることができ、時間がなかったり出歩くのが好きではなかったりする多くの「オタク君」が、家でソファに寝転びながら気に入ったスキンケア製品やメイク製品を買えるようになった。
長春の「90後(1990年生まれ)」の男性の白玉さんは、自分のイメージをことのほか重視する。「職場でも普段の生活でも、自分への要求が高い。特にシングル男性にとって、イメージを大切にすることはとても大事で、そうすればふさわしいパートナーを見つけるのにプラスになる」という。
白さんの言うように、女性は男性の顔面偏差値経済の発展で欠かせない推進力だ。崔さんは、「中国社会全体の美の基準が徐々に上がっており、男性の顔面偏差値に対する女性の要求も、男性自身の顔面偏差値に対する要求に内面化されている」と述べた。
将来はバレンタインデーや父の日などさまざまな節目に、中国の男性がパートナーまたは親戚・友人から化粧品のギフトボックスをプレゼントとして受け取るのは珍しいことではなくなるだろう。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年12月24日